【連載】
【編集部から】
インターネットユーザーにとって、1日たりとも欠かせないのが検索エンジン。その検索エンジンをディープに使い尽くすための情報を、毎回詰め込んでお届けします。
第20回 再編される検索エンジン業界の余波、続々
●楽天がFASTを採用
BUSINESS WIREの12月15日の記事によると、ノルウェーのFast Search & Transfer(FAST)社の検索エンジンが、日本の楽天に採用されたそうだ。楽天市場の検索機能を強化するためだという。FASTはAllTheWebという検索ポータルを持っており、その検索性能はGoogleに匹敵すると言われている。同社の検索エンジン部門は今年初めに米Overtureに買収され、そのOvertureは夏に米Yahoo!に買収されたのはご存じの通り。
いずれにせよ、日本企業がこのような形でFASTのエンジンを採用するのは、たぶん初めてだ。これを突破口に、FASTが日本に本格進出してこれば、面白い展開になってくるかもしれない。
BUSINESS WIREの記事では、楽天役員の吉田敬氏がこんなふうにコメントしている。
「FASTのすばらしいパフォーマンスとスケーラビリティは、われわれの期待を超えるものだった。これによって3分の2のサーバーを減らすことができ、TCO削減に役立つ。それに加えて、1秒間に受け付ける検索クエリーのピーク数をこれまでの3倍以上に引き上げることができた」
FASTはエンタープライズ分野のビジネスを、Eコマースのような分野でのミッションクリティカルなアプリケーションにシフトさせつつある。検索ビジネスは今後、こうした企業内利用の分野へとどんどん広がっていくのだろう。その好例としても、今回の楽天のFAST採用には注目しておきたいところだね。
●Looksmart、生存を賭けた苦闘
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LooksmartのWebサイト |
数週間前、マイクロソフトのポータルサービスであるMSNが、Looksmartとの契約を2004年1月で打ち切るというニュースがあった。打ち切られるのは、Looksmartの広告型検索サービスである「LookListings」だ。3万を超えるクライアントが登録しており、検索に広告モデルを持ち込んだ先駆的存在として知られていた。
ところがこの夏、検索エンジン業界の再編の波を受けてMSNが検索結果ページのレイアウトの変更などを行ない、さらに独自の検索エンジン「MSNbot」の開発を開始するなど、マイクロソフトがこの業界への本格参入をうかがい始めた。そのあおりを受けてというか、荒波をもろにかぶったのがLooksmartというわけだ。
Looksmartのビジネスのうち、MSNから得られた売り上げは65%にも及んでいた。契約解消でこの65%が消滅することになる。さらに今回、SprinksやInktomiからも契約を切られ、新たに6%の売り上げダウンが明確になってきた。たいへんな事態だ。
数日前、Looksmartは従業員の半分――150人から200人を解雇すると発表した。同社の証券取引審議会への提出書類を見ると、2004年は赤字に転落する危険があるという意味のことが書いてある。かなりやばい状況だ。
同社が今後、生き残れるかどうか。新たな提携先を見つけることと、新たな検索プロダクトを開発すること。生き残りは、その2点にかかっていると言えるだろうね。
■関連記事
・ 米Microsoftがサーチエンジンを開発中~米Googleに対抗との噂も(2003/6/23)
(2003/12/16)
[Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚]
【著者プロフィール】 |
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・文=ジェフ・ルート(Jeff Root)
ECジャパン株式会社のSEOチーフスペシャリスト。日本には出たり入ったりで早や10年。メールアドレスは「jeff@ecjapan.jp」。日本語もOKなので、気軽にメールをくれると嬉しい。なお、開催中のGoogleの利用方法に関するアイディアを募集するコンテスト「Google超活用法・アイデアコンテスト」の審査員も務めている。締切は2004年1月5日だ。皆もぜひ応募してほしい。 |
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・翻訳=佐々木俊尚
元全国紙社会部記者。その後コンピュータ雑誌に移籍し、現在は独立してフリージャーナリスト。東京・神楽坂で犬と彼女と暮らす。ホームページはこちら。 |
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