【連載】 【編集部から】 ●広告型検索エンジンの価格表から見えてくるものは……
その値段はどのように算定されるのだろう? まず最初に、1カ月5,000クリックで0.15ドルというCPC価格がベースになる。これはどんな商品でも業種でも、同じ金額だ。そして5,001番目のクリックから、業種によって値段が変わっていくことになる。 Looksmartはこのアイデアを実現するために、インターネットの市場についてかなりの突っ込んだリサーチを行なってきたようだ。僕の考えでは、価格表である「Looksmart Looklistings」は、特定のマーケットがどの程度注目されているのかを測るために使えるのではないかと思っている。他のジャンルと比べ、自分のサイトのジャンルがどれだけ価格が高くなっているのかを調べることができるからだ。 Looksmartの価格表は、現在以下のようになっている。
この価格表を見ると、欧米の人たちがインターネットの市場をどう見ているかがわかるんじゃないかな。もちろん、日本の検索エンジン市場では若干は事情が変わってくる。とはいえ、みんなもよく知ってるように、ヨーロッパや米国のネット市場で起きることをよく見ていれば、日本でのビジネスに役立つともいえるわけで……。 もしこれからSEO(検索エンジン最適化)業者を利用したり、あるいは自社でSEOをやろうとするのであれば、予算を決めるガイドラインとしてこのリストが使えるかもしれない。完璧とは言えないし、例外もたくさんあるが、オンラインマーケティングの戦略を立てる助けにはなるだろう。 ●新しいGoogle Toolbarがblog業界を呑み込んでしまう?
GoogleがWebブラウザー用アドインソフト「Toolbar2.0」のβ版をリリースした。注目すべきなのは、ポップアップ広告を遮断する機能を搭載したことだ。このPop-up blockerと名づけられた機能を一時的に停止したい場合は、CTRLキーを押しながらリンクをクリックすればいい。さらにブロックしたくないリンクは、パーソナライズされたwhite-listというデータベースに登録することができる。ここに登録しておけば、次からそのリンクのウインドウを開いても、勝手に閉じてしまうことはない。 ついで興味深いのは、フォームの自動入力機能だ。AutoFillという名称のこのオプションでは、ユーザーの名前と住所、電話番号、さらにはクレジットカード番号までハードディスク上にセキュアに保存しておくことができる。Googleの説明によると、この個人データは暗号化されてパスワードで保護されており、勝手にGoogleのサーバーに送信されることもないという。もしWebブラウザーを使っていて、画面のフォームが黄色になっていたら、このAutoFillが使えるというしるし。個人データを自動入力させて、時間を節約することができる。 僕はまだこの機能を試してはいないけれど、この機能を皆がどう感じるのかは興味深い。それから日本語バージョンがいつリリースされるのか、そっちも気になるところ。 新しいGoogle Toolbarの3番目の興味は、blogの投稿機能。Webページ上のテキストをハイライトして、BlogThisというToolbarのボタンをクリックすると、そのテキストの文字列とURLが自動的にblogに挿入される。もっとも、この機能はBlogger(Googleが今年2月に買収したPyra Labsが提供しているblogのサービスだね)でしか使えない。Radio UserLandやMovable Typeといったblogサービスのライバル企業は今回、かなり危機感を高めている。GoogleがこのBlogThis機能を普及させ、デファクトスタンダードにしてしまえば、これらのコンペティターたちがかなりのダメージを受けることになるのは必至だからだ。 ●ネット広告大手がPPC企業を買収
ValueClickのビジネス自体、PPCとは親和性が高いものだったといえる。そのビジネスモデルの中心はバナー広告とダイレクトeメールで、ユーザーが何らかのアクションを起こしたときに支払いが生じる仕組みになっている。 ・CPC(cost per click) ユーザーがバナーをクリックするごとに広告主は0.55~0.65ドルを支払う ・CPL(cost per lead) 特定のサイトにユーザーが誘導されるごとに広告主は0.30~1.50ドルを支払う ・CPA (cost per acquisition) ユーザーが購入や登録をするたびに広告主は0.50~70ドルの手数料を支払う ・オプトインメール ユーザーがダイレクトeメールのリンクをクリックするたびに、広告主は0.20ドルを支払うValueClickは今回の買収で、現金330万ドルを含めて、総額500万ドルを支払ったという。 ●自律型の自己増殖コミュニティが世界を助ける?
僕は今、この文章を米国の独立記念日に敬意を表して書いている。そう、今日は7月4日というわけだ。僕は今シカゴにいて、窓の外では花火が鳴り響き、活気に溢れた夜が始まろうとしている……。 この2年間、米国では市民の個人情報を政府が収集することについての議論が延々と続けられてきた。DARPA(Defense Advanced Research Project Agency)という名前で知られる国防総省・国防高等研究事業局は最近、TIA(Terrorism Information Awareness System、テロリスト情報認知システム)というプロジェクトをスタートさせた。2,000万ドルかけて電子的な情報を分析し、テロリストの攻撃を事前に検知してしまおうというものだ。でもこの計画は、市民の生活を政府が過度に監視してしまうものだと、皆が思っている。 マサチューセッツ工科大(MIT)のメディアラボをご存じの方も多いだろう。テクノロジーとメディア、アートを融合させたさまざまなプロジェクトを実行に移してきたことで有名だ。このメディアラボが最近開始したプロジェクトは、GIA(Government Information Awarness、政府情報認知システム)と呼ばれている。TIAに対抗して、政府の監視機関を作ろうという考え方だ。開発者たちは、政府高官たちの情報を一堂に集積する役割を担わせようと考えているようだ。 GIAでは、情報をまとめる新しい手法として、たとえば同じ利益団体(日本でいう“族議員”)に属している政治家を分類し、それからそのリストを政治献金や投票記録のデータベースと照合していく――というシステムを考えている。政治家や党、政府機関などの情報を集めて関連付けを行なっていくことで、通常の報道では見えにくい部分も含めた包括的な情報を得ることができるという。 このプロジェクトはその内容自体もさることながら、計画のデザインが非常に興味深い。GIAでは、自己増殖していく自律的なコミュニティを作ろうとしている。Googleのページランクや、Yahoo! Auctions、eBayなどのネットオークションのように、ユーザーが主体となって情報の価値を動かし、相互に評価しあうという仕組みだ。 例えば信頼できるWebサイトは、Googleの検索結果ランキングのトップに入り、あるいは不誠実な業者は、オークションではじき出されていく。それと同じようにGIAでも、利用価値が高くて公平な情報が上位にランキングされるシステムを作ろうとしている。ユーザーは信頼性で投稿を評価付けし、もしこのシステムがうまくいけば、投稿をうまく分類することができるようになるかもしれない。
GIAのサイトから、僕が最も好きな文章を引用しておこう。「TIAは毎年、何百万ドルもの予算を得て、ある意味ではまあ成功している。GIAはその100分の1のさらに100分の1の予算しかないが、アメリカ人の英知の結集で成功することができるはずだ」。 ともかく、GIAのプロジェクトは、自律型のコミュニティというWeb文化固有の局面を、マーケティングに組み込んでいく可能性を秘めているという意味で、きわめて興味深い。開発者たちは、巨額なマーケティング費用を使わずに、オンラインの行動制御だけでトラフィックを増やそうと狙っている。それはSEOが、人々が検索エンジンを使うという新しい文化をマーケティングに持ち込んだのと似ているかもしれない。
(2003/7/8) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚] |
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