【連載】 【編集部から】 ●オンラインショッピングと検索エンジンをめぐる第二幕
最近、Yahoo!がInktomiを買収したのは記憶に新しい。そのInktomiが、「Index Connect」というPFI(Pay For Inclusion、検索結果に広告主のサイトを含める手法)のサービスを提供しているのをご存じだろうか。 このIndex Connectは、オンラインショッピングのサイトなどが、検索エンジン上で販売製品の情報をうまく表示されるようにする、広告型の検索エンジンサービスだ。このサービスを使うと、ショッピングサイトのWebマスターは次のようなことが可能になる。
通常の検索エンジンでは、オンラインショッピングサイトが製品情報を更新しても、それが検索結果に反映されるまでには数日~数週間という時間がかかることが多い。売れ行きなどに応じて製品を頻繁に入れ替えているショッピングサイトから見れば、これでは具合が悪いし、品切れにも対応できない。だがIndex Connectを使えば、どの製品のページを表示して、どれを表示しないかなどを、ショッピングサイト側で自由に設定することができる。どのようなキーフレーズからトラフィックを誘導されているのかも細かく分析できる。Index Connectのようなサービスのあり方を見れば、オンラインショッピングと検索エンジンが今後、どのように融合していくのかが何となく見えてくるのではないだろうか。 先週、僕はパートナー企業の人と一緒に六本木ヒルズに行き、森タワーの中にあるYahoo! Japanの新しいオフィスを訪問した。Yahoo! Japanは今後、Inktomiとの関係をどうするのだろうか?
一方、楽天は先日、インフォシークとライコスのサービスを今年9月に統合し、ポータルサイトとしてインフォシークに一本化すると発表した。これはポータル市場のガリバーであるYahoo! Japanに挑戦することを狙った戦略のようだね。インフォシークの元社員の友人は、「楽天はライコスの資産である女性向けサイトの『Lycos Girls』や、無料ホームページサービスの『Tripod』からより多くの収益を上げられるのではないかと考えてるみたい」と話していた。また、あるオンラインショップを経営している女性は「Yahoo!ショッピングが“新規出店枠”という形で出店を絞り、店をセレクトする方式を採っているうちは、楽天も何とか生きていけるんじゃないかな」と話していた。さて、どうだろうね。 先日、Googleのスタッフに、Froogleの日本語バージョンをスタートさせる予定はないのかどうかを聞いてみた。彼の答えはこうだ。 「日本語バージョンをリリースできるデータセットはない。でもFroogleの検索結果に、各国のショッピングサイトの製品を表示できるように作業を進めているところだ」 ちなみにFroogleはInktomiのIndex Connectとは異なり、クリックスルー率による課金は取られない。
●サーチキングの伝説その後――訴えは棄却された 以前、サーチキング(Search King)とGoogleの裁判の話をお伝えしたのを覚えているだろうか。Googleのページランクを販売していた米国人、ロバート・マサ(Robert Massa)のサイトの話。そのページランクがなぜかある日突然、すべてゼロになってしまい、怒ったボブがGoogleに損害賠償を求めて提訴したという話だった。 その訴訟で、裁判官はGoogleの主張を認め、サーチキングの訴えを棄却した。判決文にはこのように書いてある。 「オクラホマ州法では、今回のページランクのケースが契約関係に基づく不当な妨害であるという主張は、言論の自由の原則によって認められない。もしその言論が嫌悪や悪感情によるものであるとしても、それは不法であるとはいえない」 Googleはページランクはopinion(見解)であり、言論の自由を定めた米国憲法修正第1条で保証されていると主張してきた。一方、サーチキング側はページランクは特許を受けたテクノロジーを利用しており、従って客観的な方法で検証される必要があると訴えた。しかし裁判所は結局、Googleの言い分を認めたということだ。 この判決のポイントは、たぶんこういうことだ――ページランクはたいへん価値のあるものだけれど、それをマーケットでオープンに販売しようとすると、買い手にも売り手にもたいへんなリスクを伴うことになる。いつ販売中のページランクが消滅してしまうかわからないからだ。おまけにその消滅したページランクを取り戻す法的な手段はない。買い主の危険負担ということだね。気をつけよう。
●Northern Lightが復活
スースは、未公開の企業向け検索エンジンを販売することを計画している。これはNorthern Lightが特許を取得しているクラスタリング技術を使ったものという。同社のテクノロジーのショーケースとして使われていたオフィシャルサイトで今後、何が行なわれるかは要注目だ。Northern Lightは将来、Overtureに買収される前のFast Search & Transfer(FAST)と同じようなポジションを得ていくことになるのかもしれない。少なくとも、Divine傘下にあったときよりはずっと状況は好転するのではないかと僕は思っている。 ちょっと昔話になるが、2000年の夏、僕はシカゴでフリーランスとしてSEOの仕事をしていた。ご存じの通り、フリーランスの仕事というのは2つの業務しかない――仕事を見つけ、そしてその仕事を実行することだ。シカゴに拠点のあったDivineは、当時たいへんな話題になっていた。彼らが「internet zaibatsu(インターネット財閥)」と呼んでいた投資会社中心の企業の集合体を作り上げようとして、たいへんなカネをばらまいていたからだ。シカゴでは多くの人たちが、Divineの考えたモデルはユニークで興味深いものだと思っていた。とっても「ニューエコノミー」なスタイルで、おまけに「zaibatsu」という日本語の響きもクールだった。中には、入れ墨にその文字を入れたらカッコいいと思った連中もいたほどだ。――米国人の中には、漢字の入れ墨を入れるのがクールだと思ってる連中がいるのは知っているよね? 僕はその当時、Divineに関係している30のWebサイトをブラウズしてみた。グループ会社のもあったし、顧客企業のもあった。そこでわかったのは、彼らがSEOのことを何にもわかってはいないということだった。こりゃたいへんな金脈だ! 僕は彼らの専属SEOになれるかもしれない! いっぱい仕事を請け負うことができるかもしれないぞ! ……しかし、そうはならなかった。僕はDivineのスタッフたちにSEOの説明をしたんだけれど、彼らは全然興味を示さなかったんだ。 あれから3年経った今でさえ、Divine Interventuresのサイトを見ると、彼らが相変わらずSEOを全然理解していないことがわかる。自動的にIPアドレスにリダイレクトするメタタグを使い、それをまたダイナミックURLにリダイレクトしている。さらに、彼らは同じ内容のWebサイトを別のURLにもミラーしていて、基本的なSEOの手法を踏襲していない。おまけに、Divineはこうしたやり方のコンテンツマネジメントシステムを販売している。 Divineは2003年2月に破産申請した。彼らの作り上げたzaibatsuは、いったい何をもたらしたのだろう? ご存じのように、日本社会では戦後、財閥が解体された。財閥というシステムは非合法とされたのだ。Divineは映画「Matrix」の中の架空世界の中に踏み込んでしまったのかもしれない。……そして彼らは最後まで、それに気づかなかったのだ。 ところで僕もSEOを生業にするプロとして、日本語で“検索エンジン最適化”ってお腹に入れ墨を彫り込むべきかな? それともサンスクリット語のほうがよかったりして? 読めない言葉の方がいいかもね。
(2003/6/10) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚] |
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