【連載】 【編集部から】 ●Googleの収益源はいくつある?
インタビューは、blog運営者たちのコミュニティであるAlwaysOnが行なった。Googleの独自の意志決定システムや、blogの無料サービス「Blogger」を提供しているPyra Labs買収の舞台裏など、これまであまり明らかになっていない話が満載だ。検索エンジン業界の将来を見通すという視点からも、非常に興味深い内容になっている。 さて、インタビューの後半では、Googleのビジネスモデルについての話が出てくる。同社が収益を得ているのは、次の3つのビジネスからだ。 (1) Yahoo!やAOLなどのポータルサイトへの検索エンジン提供 (2) Adwords広告 (3) 企業向け検索システムの提供 以前はポータルサイトの検索エンジンを使うと、「Powered by Google」というロゴが表示されることが多かった。だが最近はそうした表示がないケースも増えてきている。巨大化するGoogleの存在に、ポータルの側が危機感を感じているのかもしれない。シュミットは「それでも全然OKだ。だって彼らは顧客だし、どうするかは彼らが決めることだから」と言っている。 企業向けの検索ビジネスでは、「Google Search Appliance」という名称で機器を販売している。黄色の外観が印象的なハードウェアだ。Cisco SystemsもGoogleのこのサービスを使っているという。エンドユーザーにはあまり縁がない分野だが、同社の収益の大きな柱になりつつあるようだ。 そしてこの3本柱以外に、Googleが最近始めた新ビジネスがある。それが「コンテンツターゲット広告」というサービスだ。これはGoogleの検索結果に広告を表示するAdwordsをさらに発展させたもので、検索サイトではない一般のWebサイトに広告を配信。この際、当該サイトの内容に合わせた広告を自動的に選択し、これによってAdwordsと同じようにクリックスルー率を高めることができるのではないかとみられている。Adwords広告によってネット広告業界の一角どころか、主要プレーヤーにのし上がってしまったGoogleだが、ネット広告におけるその存在感はますます大きくなるかもしれない。 Googleは海外への展開も積極的に行なっていくという。シュミットはインタビューで「Googleの検索は、半数以上が米国外からのアクセス。インターネットの普及がすばらしい速度で進んでいく中、海外市場の伸びは米国内市場の伸びを上回っている」と説明。日本でAdwords広告ビジネスをスタートさせ、その後の6カ月で急成長を遂げた事実を例に挙げ、「米国で確立したビジネスモデルが、その他の国で受け入れられないはずがない。メインのターゲットは西ヨーロッパと日本、オーストラリアだ」とコメントしている。
●ムーアの法則のくびきから逃れるために 米国のIT関連ニュースサイト「Red Herring」に、マイク・マローン(Mike Malone)が書いた「ムーアの法則は忘れよう」という記事が話題を呼んでいる。ムーアの法則というのはご存じのように、インテルの創設者であるゴードン・ムーア(Gordon Moore)が1965年に提唱したもので、「半導体チップの集積度は18カ月で倍になる」という経験則だ。この法則はその後、半導体チップだけでなくIT業界のさまざまな局面に当てはめられるようになり、業界の標準原理のようになっている面もある。 この記事では、ムーアの法則について「ビジネス戦略や利益、市場といった要因をすべて犠牲にし、ムーアの法則に従うということだけがわれわれの強迫観念になってしまっている」、「ムーアの法則は暴走機関車のようなものだ。あるいは惨事に向かって坂道を転げ落ちていくようなというか、それともカーブごとにスピードを上げていくような危険な行為というべきか。この暴走機関車から降りるすべを考えないと、われわれは最後にはIT産業をぶっ壊してしまうことになるだろう」と指摘。「ムーアの法則は有害で、IT業界の発展を阻害している」と批判している。 この記事の中で、シュミットの発言が取り上げられている。「インテルのItaniumプロセッサによって、Googleのビジネスがどのような影響を受けるか」と聞かれたシュミットは、「影響はない」とあっさり否定。「GoogleはItaniumのような高性能なプロセッサを使うつもりはまったくない。むしろ、もっと安価で性能の低いプロセッサが今後のサーバを構成していくことになるだろう」と答えたのだ。
AlwaysOnのインタビューに戻ろう。 「これでは日用品(コモディティ)のビジネスだ」とシュミットは言う。「そうなることを回避するため、われわれはWindowsの新しいバージョンを次々と市場に投入したり、インターネットの爆発的ブームを生み出したりしてきた。需要を生み出すことで前へ前へと進んできた」。だがそうした努力によって、成長のカーブを維持し続けるのは非常に難しい。しかも現在、そうした明確なキラーアプリは存在しない。パソコンの買い換え需要は2000年問題がホットだった時にすべて完了してしまい、新たなアプリケーションを使うためにパソコンを買い換えようと思っている人は少ない。ではどうすれば良いのだろうか。 シュミットは「次世代のキラーアプリがあるとすれば、それはメディアをおいて他にはない」と言う。そしてIT業界を再び成長の局面へと向かわせるただひとつの方法は、情報にアクセスする方法を拡張し、発展させていくことなのだと。そうした拡張のひとつがblogであり、GoogleがPyra Labsを買収したというのもその一環というわけだ。実際、シュミットはインタビューの中で明快にこう答えている。 「IT業界の成長の原動力が情報である、というコンテクストにおいては、状況はGoogleに有利に働いている。だって我々は情報へのアクセス方法を拡張するということを、ずっとやってきたわけだからね。」 ※エリック・シュミットのインタビューはAlwaysOnの許可を得て使用しています。
(2003/5/28) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚] |
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