【連載】 第37回 マイクロソフトはヤフーに法廷闘争を仕掛けるか? ●YSTがGoogle AdSenseと絶交? searchengine-news.comが、なんとも興味深い話をレポートしている。 彼らのWebページのいくつかにコンテンツターゲット広告のGoogle AdSenseを貼り付けてみたところ、それらのページ自体がYahoo! Search Technology(YST)でまったく検索されなくなってしまったというのだ。その後彼らはAdSenseのコードをYSTから隠すため、ターゲットコンテンツ配信システムを使うという実験も行なった。そして「Yahoo!のスパイダーからAdSenseのコードを隠してしまうことに成功し、今ではAdSenseを埋め込んだWebページがきちんとYSTのインデックスに掲載されるようになった!」と誇らしげに書いている。 この件は、英語圏のWebマスターたちの間でたいへんな話題になっている。今後、日本でも注目を集めることは間違いなしだ。なぜって、日本ではYahoo!のシェアが欧米に比べるとかなり高いからね。 この問題は今後も追い続けたいと思っている。現在進行中の検索エンジン三国志――Yahoo!とGoogle、Microsoftの三つ巴の戦いにも関係してくる話だからだ。 ●Ask Jeevesさん、日本へようこそ!8月の終わりに、アスクジーブズジャパンがAsk.jpのベータ版をリリースした。同社はAsk Jeevesの日本法人として、トランスコスモスとの合弁で2000年に設立された会社。これまでは企業向けのインターネット質問回答サービス「ジーブズソリューション」を提供し、BtoBビジネスを中心に行なっていたが、今年に入って米国の本社と同じようにBtoCの個人向けサービスに取り組むと発表していた。 プレスリリースによれば、彼らの検索エンジンは1億5,000万のリスティングを含み、次期バージョンは2005年の第一四半期にリリースされる予定だという。 とりあえずはこれからの数カ月、アスクジーブズがどの程度のトラフィックを集めていくのかを、興味深く見守っていきたいと思う。なにはともあれ、ようこそ日本へ! そして開設おめでとう! ●韓国と日本のGoogleニュースご存じのように、Googleが日本語版と韓国版のGoogleニュースをリリースした。どちらも、ニュースソースは国の内外から集められている。これに合わせて、Googleの一般的な検索結果ページのトップ近くには、Googleニュースの検索に導くヘッドラインも同時に表示されるようになった。 Googleニュースがスタートした9月1日、日本語版は600強のニュースソースからニュースを集めていた。ちなみに韓国は500強、そして米国版は4,000強だ。 Googleニュース日本語版は週刊誌のオンライン版からも記事を集めていて、新聞が書かないようなスキャンダルとかゴシップもたくさん含まれている。堅苦しい記事だけでなく、ありとあらゆるニュースが並列で読めるというわけだ。Googleがどのようなポリシーでニュースの収集先を決めているのかは明らかになっていないけれど、まあ少なくともたとえばGoogle米国版といった他のニュースリンクサイトからは記事を入手していないのは確かなようだ。 ●Googleキャッシュにタイムスタンプが出現8月上旬、Google検索結果のキャッシュページに、キャッシュの作成された日付と時間が表示されるようになった。これはとても便利だ。つまり、Webマスター側から見れば、いつGooglebotが自分のサイトを訪問し、インデックスに収めたのかがわかるようになったのだから。 ●Yahoo!とGoogle和解の影響は前にもお伝えしたが、キーワード広告のAdWordsをめぐるYahoo!とGoogleの係争が和解に持ち込まれた。この和解がなければ、Googleの新規株式公開(IPO)はうまくいかなかったのだろうと見られている。 この係争は、今はYahoo!に買収されているOvertureがGoogleを相手取って起こしたものだ。Overtureはご存じのように、キーワード広告を最初に始めた企業だ。そしてキーワード広告を後からスタートさせたGoogle AdwordsやFindWhat、Looksmartなどに対して、Overtureの特許権を侵害していると提訴していた。和解条件はYahoo!(Overture)がGoogleに対して特許のライセンスを与え、かわりにGoogleは自社普通株270万株をYahoo!側に与えるというものだった。 もしこの提訴が法廷で争われる事態となっていれば、Overtureの持っていた特許権が綿密に調べられることになっていただろう。そうなればGoogle AdWordsは特許に抵触していると認定されたかもしれないし、あるいは逆に、AdWordsは独自の技術であって特許の抵触にはあたらないと認められたかもしれない。まあでも、それは今となっては仮定の話でしかない。 Yahoo!とGoogleはなぜ和解したのだろう。たぶんもっとも可能性の高い推測は、彼らがMSNやAsk Jeevesなどの競合他社の参入を排除しようとしたということだ。特許料としてGoogle株270万株を支払うという巨額の和解が成立している以上、もしこれらの企業がこれから利益率の高いキーワード広告市場に参入しようとすると、Yahoo!に同様の巨額の特許使用料を支払うか、あるいは法廷闘争を展開しなくてはならなくなる。 もっともこの件については、Googleの側はかなり心配しているのではないかという話もある。つまりマイクロソフトは潤沢な資金を持っていて、裁判闘争にも慣れている。独占禁止法をめぐって各国の司法当局と終わりなき戦いを続けてきたのは、ご存じの通り。となると、たいへんな儲けとなるキーワード広告特許をめぐって、マイクロソフトがYahoo!に裁判を仕掛けてくる可能性は捨てきれない。そうなるとGoogleも騒ぎに巻き込まれ、なんらかの悪影響を避けられないのでは――と彼らは考えているというのだ。 どうなのだろう? (2004/09/09) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚]
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