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いよいよ位置情報がキーワード広告の世界にやってきた
[2005/12/06]


AOLの持つパワーを奪い合う検索エンジン企業たち
[2005/11/14]


MITの100ドルパソコンとGoogleNetの深い関係
[2005/10/12]


検索エンジンと中国の関係はどこに向かうのか
[2005/09/20]


インターネットのコメントとレビュー
[2005/08/31]


検索エンジンの未来はどうなる?
[2005/08/11]


RSS検索が市民ジャーナリズムを支えていく?
[2005/07/15]


ディープWebを浮上させるYahoo!の戦略とは
[2005/07/01]


検索エンジンの「リミックス」って何だ?
[2005/06/07]


クリック詐欺がテレビニュースになる日
[2005/05/18]


ライブドアだけじゃない、すさまじい検索企業の買収劇
[2005/04/04]


Yahoo!とGoogleの戦争、コンテキスト広告でも勃発!
[2005/03/16]


「長いしっぽ」が世界に革命を起こす
[2005/03/04]


検索エンジン最新トレンドは「使い勝手」だ!
[2005/02/14]


コメントスパムをみんなでやっつけよう
[2005/01/28]


検索エンジンマーケティング業界が分裂?
[2005/01/14]


検索エンジンを崩壊させる「クリック詐欺」が撲滅されない本当の理由
[2004/12/08]


MSN SearchはGoogleを超えたか?
[2004/11/26]


キーワード広告に定額制が導入される?
[2004/11/12]


デスクトップ戦争が熱くなってきた!
[2004/10/28]


Googleがホスティング事業に進出!?
[2004/10/13]


A9が「検索ヒストリー機能」をひっさげてやってきた
[2004/09/28]


マイクロソフトはヤフーに法廷闘争を仕掛けるか?
[2004/09/09]


サーチエンジンオーバードライブの夜
[2004/08/25]


GoogleとYahoo!の和解で、業界はどう変わる?
[2004/08/11]


検索エンジン特許から業界展望を読む
[2004/07/29]


Googleの株価はどうなる?
[2004/07/15]


ラスベガスのSEO企業にご注意を!
[2004/06/30]


Googleが裁判で敗れる日!?
[2004/06/16]


Yahoo! JAPANとGoogleの提携解消が与える影響は?
[2004/06/01]


GoogleとMicrosoftの「仁義なき戦い」
[2004/05/26]


新しい検索エンジン「ウジコ」って何だ?
[2004/05/12]


オークション大戦争、前哨戦が中国で勃発?
[2004/04/21]


Googleの新しいメールは盗聴システムになる?
[2004/04/07]


Yahoo!が独自のページランクテクノロジーを開発?
[2004/03/25]


「ローカルサーチ」という新しいトレンドって?
[2004/03/10]


Yahoo!の新しい検索エンジンは、アンチスパムを装備
[2004/02/25]


Googleはネット共同体からイチ抜けた?
[2004/02/10]


画期的に新しい? MSN Searchの驚くべき戦略とは
[2004/01/28]


検索結果がビジュアルになるメリットって?
[2004/01/13]


再編される検索エンジン業界の余波、続々
[2003/12/16]


ビジネスと政治に翻弄される検索エンジン
[2003/12/02]


幻に消えた? MicrosoftのGoogle買収報道
[2003/11/18]


Googleが買収されると検索結果はどう変わる?
[2003/11/04]


地理感覚のある検索エンジンが登場!
[2003/10/21]


gooとGoogleの歩んでいく道は……
[2003/10/07]


OvertureとGoogleはどっちがパフォーマンスが高い?
[2003/09/24]


オーガニックな検索エンジンマーケティングって何だろう?
[2003/09/09]


Googleとユーザーたちの間に起きた「ハリウッド風エンディング」
[2003/08/12]


Yahoo!のOverture買収で浮上した3つの疑問
[2003/07/29]


ネット広告の値段で人気業種がわかる
[2003/07/08]


GoogleはNetscapeの二の舞になる?
[2003/06/24]


商品カタログ検索がネットビジネスを制覇する?
[2003/06/10]


Googleの進んでいく道の先には(下)
[2003/05/28]


Googleの進んでいく道の先には(上)
[2003/05/13]


SETI@homeと検索エンジンをつなぐもの
[2003/04/22]


狙いは“商品検索”じゃない、AmazonとGoogleの提携
[2003/04/08]


打ち捨てられた“メタタグ”が復活する日
[2003/03/25]


相次ぐ買収劇の背景を探れ!
[2003/03/25]



【連載】
そこが知りたい!検索エンジンの裏側ロゴ

【編集部から】
 インターネットユーザーにとって、1日たりとも欠かせないのが検索エンジン。その検索エンジンをディープに使い尽くすための情報を、毎回詰め込んでお届けします。

第34回 検索エンジン特許から業界展望を読む


●Yahoo!に好かれる19の方法

 米Yahoo!は親切なことに、どのようなWebページだったら彼らのインデックスに登録されやすいのかということをサイト上で公開している。彼らが好きなページは、次のようなものだ。

  • 独自性があってユニークで、価値のあるコンテンツが含まれている
  • 検索エンジンに気に入られるかどうかだけでなく、人間のユーザーが読みやすいようにデザインされている
  • 人々がきちんと自分の求める情報へと行き着けるように計算されたハイパーリンク
  • メタデータがそのページの内容を正確に記述していること
  • 誰にでも読みやすい美しいWebデザイン

 一方、Yahoo!に嫌われるWebページは、こんな類だ。

  • 検索エンジンの検索結果の正確性や多様性、適切さを害するようなページ
  • 他のページにユーザーを誘導するためだけに作られたページ
  • 他のページとURLが異なるだけで、中身がまったく同じページ
  • 不必要に大量のバーチャルなホストネームを持っているページ
  • 内容はほとんどないのに、分量だけが大量に自動生成されているページ
  • 人工的に検索結果ランキングの上位に入り込めるような手口を使っているページ
  • ユーザーから不可視になっているテキストが含まれているページ
  • ユーザーと検索エンジンのロボットに対して、別々のコンテンツを提供しているようなページ
  • サイトの人気を高めるために、過度のクロスリンクが行なわれているページ
  • 検索エンジンだけのために作られているページ
  • 競合他社の社名を少しだけ改変して、人を惑わすような名前の付け方
  • 同じコンテンツを持ったページを大量に用意するような行為
  • 大量のポップアップが現われ、ユーザーの操作を邪魔するようなページ
  • 詐欺的な内容を含んでいるページ

 日本のYahoo!を見てみたけれど、この内容は掲載されていないみたいだね。僕らで日本語訳をやっておいたから、ぜひこいつを掲載してくれ!(その際はぜひビールを一杯ごちそうになりたいものだ)

●検索エンジン特許に見るMicrosoftの戦略

 「SearchEngineJournal」が集めた検索エンジン関連技術の特許リスト、っていうのが無性に面白い。それぞれの特許の名前を見ると、検索企業がいったいどんな方向に進もうとしているのかがおぼろげながら浮かび上がってくるからだ。

 「ユーザーの検索要求とそれに対する適切なフィードバックラーニングのための自然言語構文解析(Search engine with natural language-based robust parsing for user query and relevance feedback learning)」という特許は、Microsoftの出願。「ハイパーリンクを含むページを表示するための文脈情報認識メソッド(Method for promoting contextual information to display pages containing hyperlinks)」とか、「フレキシブルキーワード検索(Flexible keyword searching)」なんていうのもある。彼らはAsk Jeevesがやっているような自然文検索を作ろうとしているのかもしれない。

 それから同じMicrosoftの「コンテンツ修復システムとその手法(System and method for content retrieval)」というのは、携帯電話向けだろうか? その説明は、こんな風に書いてある。

 「コンテンツ修復システムはコミュニケーション信号の解析システムを内蔵しており、コミュニケーション信号を受信すると、そのコミュニケーション信号に関連付けられた検索キーワードをデコードすることができる。検索システムはこのキーワードを使ってコンテンツベースの検索を行ない、表示システムは検索システムと連動し、コミュニケーション信号に一対一で対応した検索結果を表示する。」

 Microsoft以外の特許出願も、さまざまに興味深い。NECがメタ検索アーキテクチャの特許を出願しているなんて、皆さん知ってた?

URL
 検索エンジン関連技術の特許リスト(SearchEngineJournal)
 http://www.searchenginejournal.com/index.php?p=688

●検索エンジンとアメリカ大統領選の関係は

 もうすぐアメリカの大統領選挙がやってくる。僕が最も興味を抱いているのは、この選挙結果がインターネットにどのような影響を与えるかということだ。毎日、仕事場の椅子に座ってそのことにばかり思いをめぐらしている。ブッシュ政権が打ち出した政策の多くは長期的に見れば、合衆国政府やアメリカ企業に世界をコントロールしてしまえるような強大な権限を与えてしまっている。このことで世界が受ける影響は計り知れない。だったら同じようなことが、インターネットでも起きるのではないだろうか? インターネットはアメリカのテレビ業界やラジオ業界みたいになってしまうのではないだろうか?

 その2つの業界がどのようになっているのか、ざっと説明しておこう。テレビ・ラジオ業界の現状は、インターネットの未来になるかもしれないから。

 ラジオが最初に発明されたとき、人々はこれこそが一般市民の参加できる、本当に民主的なメディアになるんじゃないかと期待した。革命的だった。でも最近、僕が久しぶりにアメリカに帰国してみたら、車のラジオから聞こえてきたFM局の音は、かつて人々が期待した民主主義とはほど遠く、耐え難いほどうるさいコマーシャルに満ちていて、クリエイティビティのかけらもなかった。空っぽだ。聞くに堪えないほどだった。

 その時、僕はあることに気付いた。帰国して僕は故郷で何人かの友人の車に乗せてもらったのだけれど、誰も車のラジオをつけていなかったのである。みんな、ドライブ中には音楽CDをかけているのだ。いつからこんなことになってしまったのだろう? だって僕らはラジオから流れる曲に合わせて口ずさみ、青春時代を送ってきた世代なのに。それは僕らの親の世代から、ずっとそうだった。

 いったい、ラジオに何が起きたのだろう? どうしてアメリカのラジオはこんなに空っぽになってしまったのだろう? 最大の理由は多分、1996年に電気通信法が議会で成立したことだろう。この法律はラジオに対する政府の規制を緩和し、おかげでメディア企業は数多くのラジオ局を買収して傘下に収めることができるようになった。Clear Channelという企業は全米に点在している数百のラジオ局を買収し、ひどい時には1つの街にあるいくつものラジオ局を丸ごと傘下に収めるようなことまで行なった。その結果、何が起きたかといえば、ラジオ局の多様性が失われ、インディーズのバンドがラジオで自分たちの演奏を放送してもらおうとすれば、否が応でもClear Channelを通さなければならなくなった。何しろ同社は、全米の65%ものロック専門局を支配しているのだ。そしてClear Channelはラジオの独自性も支配するようになり、今ではロックバンドのコンサートツアーをいつどこで行なうのかということまで彼らが決定しているほどだ。

 そしてここからが興味深い話になるんだけれど、Clear Channelはブッシュ政権を強く支持している。2003年にディクシー・チックスがイギリスでのコンサートでジョージ・ブッシュへの批判を派手にぶち上げた際、Clear Channelはすぐさま彼女たちの曲の放送を全米で取りやめた。アメリカがイラクに対する戦争を起こすと、Clear Channelは戦争に賛同する集会を各地で開催し、セプテンバー・イレブン以降にアメリカ国内で増えている過激な愛国主義者たちにアピールした。そしてClear Channelは今では65の国で1,300ものラジオ局を所有している。同社のCEOは他の投資家とともに1998年、野球チームのテキサス・レンジャーズを買収し、共同オーナーだったジョージ・ブッシュを大金持ちにした。この買収で、ブッシュ大統領は1,500万ドルものカネを得ているのだ。

 ベトナム戦争反対をうたった歌は、みんながいっぱい知ってるよね。でもイラク戦争に反対する歌を知っている人はいるだろうか? 歌がないはずはない。流れなくなっただけだ。そこがベトナム戦争当時と、今の大きな違いになっている。

 そしてラジオと同じことが、アメリカのテレビ業界でも起きつつある。連邦通信委員会(FCC)は最近、メディアの所有権制限を緩和する法案に賛同した。新しい所有権ルールは、現行の放送局が市場シェアを拡大することを許している。これでメディア企業は1つの街にある複数のテレビ局や新聞社、ラジオ局を所有できるようになる。この新しい法律が出来ると、ものごとにたいする多様な見解が視聴者に伝わらなくなってしまうのではないかという議論が起きている。シンプルに言い換えれば、アメリカの民主主義が弱体化してしまう可能性があるということだ。

 ではインターネットはどうなるのだろう?

 ロンドンに本拠地を置く市民団体のPrivacy Internationalが、インターネットの検閲と自由に関するレポートを発表している。

 「セプテンバー・イレブンによって、多くの政府が市民の反対にもかかわらず、規制を強める政策を打ち出すようになった。そして今や、監視テクノロジーは兵器産業の重要なサイドビジネスになりつつある。」

 「インターネットの普及は水平的なコミュニケーションを増大し、垂直的なコミュニケーションを減少させる効果をもたらしている。しかし政府による検閲と管理は、メディアに対する信頼を損ね、情報の流れを阻害し、結果としてインターネットに重大な影響を与える可能性がある。」

 「開発途上国はデジタル盗聴や暗号解読、スキャニング、追跡システムなどの監視テクノロジーを提供してもらうことで、先進国への依存を強めている。監視テクノロジーの第三世界への移転は、兵器産業にとっては実入りのよいサイドビジネスになっているのだ。こうした技術移転の助けがなければ、非民主的な政府はインターネットにおける反体制活動を監視し、コントロールすることができないのである。」

 また、スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授は、こう言っている。「アメリカの通信企業は、インターネットをテレビやラジオのようなコントロールされた配信メディアへと転回させようとしている。そしてそのために必要な技術的措置を、インターネットのインフラに加えようとしているのだ」。

 インターネットは、どちらに転がっていくのだろう? ホワイトリスト(好ましい人のリスト)か、それともブラックリスト(好ましからざる人物のリスト)か。前者は明白に許可されているもの以外は、すべて制限される世界。そして後者は、明白に禁じられているもの以外は、すべて許可されている世界。ミャンマーのような軍事政権下の国に住んでいない僕たちにとって、インターネットは後者のブラックリスト的仕組みで成り立っている。違法でなければ、どんなコンテンツであってもアップロードやダウンロードは自由だ。でもテレビやラジオはホワイトリスト的な仕組みになっている。放送を明示的に許可されたものだけを、視聴することが許されているからだ。もしあなたが政府の許可なしにラジオ局やテレビ局を始めようとすれば、重い罰が与えられる。

 ブッシュ大統領は、どんな複雑なことでも、いい(善)か悪い(悪)かで簡単に捉えてしまおうとする単純な人だとされている。でもインターネットが100%ホワイトリストになったり、あるいは100%ブラックリストになるというのは考えにくい。多分、一部はブラックリスト的になり、一部はホワイトリスト的になり、総体としては“グレーリスト”といった感じになるのかもしれない。

 じゃあもう一度問おう、ブラックリストかホワイトリストか、どちらの傾向が強くなるんだろう?

 「インターネットで影響力のある企業は、自分たちのビジネスが自由でオープンなインターネットがなければ成り立たないことに気付き始めている。例えばGoogleがそうだ。コントロールされたインターネットの世界では、彼らの検索エンジンは成り立たない」。アメリカのニュースサイト「MSNBC」の記事にそんなコメントがあった。

 インターネット社会が自由のために戦わなければならないという状況はますます進んでいるけれど、しかしネットのパワーがシフトしていくのを食い止めるのは非常に難しい。おまけにネットユーザーの多くが目の前で起きていることに気付いていない状況の中では、いっそう困難だ。

 ジョニ・ミッチェルの歌「Big Yellow Taxi」にこんな一節があった。「いつも過ぎ去ってしまうことに気付かないから なくなってしまうまであなたはそれを知らない 子供のころはラジオから流れる歌を聴くのが好きだった……」。

URL
 Clear Channel
 http://www.clearchannel.com/Corporate/company_history.aspx
 インターネットの検閲と自由に関するレポート(Privacy International)
 http://www.privacyinternational.org/survey/censorship/

(2004/07/29)

[Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚]


【著者プロフィール】
・文=ジェフ・ルート(Jeff Root)
ECジャパン株式会社のSEOチーフスペシャリスト。日本には出たり入ったりで早や10年。メールアドレスは「jeff@ecjapan.jp」。日本語もOKなので、気軽にメールをくれると嬉しい。
・翻訳=佐々木俊尚
元全国紙社会部記者。その後コンピュータ雑誌に移籍し、現在は独立してフリージャーナリスト。築42年の古い家で、犬と彼女と暮らす。ホームページはこちら


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