【連載】 【編集部から】 ●OvertureをWebマスターたちが応援するワケは?
米OvertureのWebサイトによると、Overtureの広告はGoogleのAdWordsよりも高いコストパフォーマンスを保っているという。Overtureの言い分は、こうだ。「独立系のマーケットリサーチ会社であるcomScoreの最近の調査で、OvertureのPPC広告モデルはGoogleのAdWordsよりもコストパフォーマンスが高く、きわめて高い利益を生み出すことができることがわかった」。この結論は、2002年9月に行われた英語圏のPPC広告を調査した結果、判明した内容だという。 オンラインショッピングサイトへのGoogleからのトラフィックの78%は、Google AdWordsからではなく、Googleの純粋(オーガニック)な検索エンジンの検索結果からのものだという。この調査では、純粋な検索エンジンからのトラフィックは無視し、広告型検索エンジンからのクリックだけを調べた。 ニールセンがやっているようなテレビの視聴率調査と同じ手法で、5000のオンラインショッピングサイトに集まってくるトラフィックを分析した。調査は昨年9月。OvertureとGoogleのPPC広告をクリックしたユーザーのデータを収集し、その結果、次のようなことがわかった。第1に、Ovetureの広告が1000回クリックされた場合、Googleが1000回クリックされた場合の2倍の収益を生み出す。第2に、OvertureのコンバージョンレートはGoogleよりも30%も高い。コンバージョンレートというのは、同じトラフィックがあった場合、その中で実際に購入や登録を行う人の割合がどの程度かという数字だ。comScoreの調査によると、AdWordsのコンバージョンレートは2.0%。対してOvertureは2.6%だったという。 Google AdWordsについてはさまざまなPRが行われており、Overtureのビジネスを凌駕している雰囲気もある。だがPPCに経験の深いオンラインマーケティングの専門家たちの意見は、必ずしもそうではない。今回のcomScoreの調査結果は、OvertureのWebサイトでリリースされているものだから、そりゃそれなりのバイアスがかかっているというのは考慮しなければいけない。しかし、それにしても「OvetureならGoogleの倍の収益を上げることができる」というのはかなり興味深い結論だ。実際、僕が以前会ったWebマスターも、Ovetureの方がGoogleよりもコンバージョンレートが高いと言っていた。 Overtureにはほかにもメリットがある。ひとつは、Googleよりも検索結果ランキングの順位をクライアントの側がコントロールしやすいことだ。Googleがクライアントから支払われた料金とクリック率の双方を考慮して検索結果ランキングを算出しているのに対し、Overtureは単純に料金だけでランキングが決定する。いちばん高いカネを払った人が、いちばん高い順位をゲットする。単純だ。 もうひとつのメリットは、Overtureの方が検索結果の見出しが長いことだ。英語版のGoogle AdWordsは、タイトルに25文字、内容の説明に70文字までしか認めていない。これがOvertureでは40文字と190文字になる。文字が多い方がたくさんの内容を盛り込むことができて、サイトに誘導しやすいと考えるWebマスターは少なくないようだ。 そんなわけで、Overtureには注目が集まっている。MSNがOvertureとの提携を続けているのも、そのあたりに理由があるのかもしれない。 ●オープンソースの検索エンジンが日本語化される日前回の連載で紹介したNutchという検索エンジンを覚えているだろうか? 商業的な方向に傾斜しつつある検索エンジンの世界で、圧力や偏見、広告に左右されない検索エンジンを作り上げようというオープンソースのプロジェクトだ。このNutchが今後、Googleに与えるであろうインパクトは、Linuxという存在がWindowsに与えている影響になぞらえられるかもしれない。Nutchをサポートしている人たちを見ると、そんな思いにとらわれる。 米国メディアの報道によると、初期のNutchエンジンの開発は、Overtureの研究部門によって支援されていたという。実際、OvertureのスタッフがNutchの理事会メンバーに就任している。またNutchの創設者であり、中心的なプロジェクトマネージャであるダグ・カッティング(Doug Cutting)は、かの有名なゼロックス・パロアルト研究所(PARC)に開発者として勤務した経験があり、その後ExciteとAppleでも働いている。彼の願望は、世界中の開発者たちがこのプロジェクトに参加し、Nutchを頑健なプラットフォームへと成長させていくことだという。つまり彼が望んでいるのは、OSのLinuxやアプリケーションのApacheがそうだったように、「Googleに囲い込まれてしまわない賢い開発者の集団が、Nutchを支えていく」というオープンソースのモデルだ。 Nutchの理事会には他に2人の有名人が名を連ねている。ひとりは、Lotus 1-2-3の設計者で、Lotusの創業メンバーでもあり、そしてオープンソースアプリケーション財団(Open Source Applications Foundation)の代表でもあるミッチ・ケイパー(Mitch Kapor)。そしてもうひとりは、O'ReillyのCEOであるティム・オライリー(Tim O'Reilly)だ。それからブルースター・カール(Brewster Kahle)が支援しているのも忘れてはならない。彼はAlexaとInternet Archiveの共同創設者だ。 先日、僕はNutchのメーリングリストを読んでいて、日本の大学生がNutchの多言語化の可能性について質問しているのを見つけた。その大学生は、できるのであれば自分が手伝いたい、って提案したんだ。これに対して、Nutch開発の中心メンバーであるマイク・カファレラ(Mike Cafarella)はこう答えていた。「すべての言語をサポートしたいと考えているけれど、これまでのところは英語しかテストしていない。アジアの言語についてもサポートしたいと思っているんだが、よく知らないんだ」。この返答を読むと、彼らが日本人の開発者やテスター、翻訳者などを求めているようだ。 Nutchの開発者向けWebページには、次のようなメンバーを求めていると書いてある。
1. NutchのWebページを他の言語に翻訳してくれる人。 うーむ、興味深い話だね。この分でいけば、今年の終わりまでには多言語版のベータテストにたどりつくかもしれない。
(2003/09/24) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚] |
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