自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

第7回

失敗しないWi-Fiルーターの製品選び(1)

国内メーカーと海外メーカーの良いところ/簡単Wi-Fi接続設定機能の注意点

「自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!」連載記事一覧

 前回は、自宅回線がどのようになっているか、特にWi-Fi機能が回線業者からのレンタルになっていないかは、事前にチェックしておきたいと解説した。Wi-Fiルーターを自前で選ぶとなると、どういったポイントで選べば良いのか迷うはずだ。今回から、数回に分けてWi-Fiルーターの製品選びについて、少し考えていこう。

Wi-Fiルーターは種類がたくさんあるので、選ぶのも大変。まずは好みのメーカーの狙いをつけよう。海外製品はやや大きめ。写真手前と左が海外製。中央は海外製だがAppleの1世代前モデル

 まず、国内でWi-Fiルーターを扱うメーカーを簡単にでも把握しておきたい。リストにすると、主要なメーカーだけでもこれだけある。このリストにあるメーカーを選んでおけばまず問題無い。

海外メーカー

 国内メーカーの良いところは、サポートが安心できることと、ルーター部分に関して日本の回線事情に合わせているので、繋がる保証があるということだ。また、11acで使う国内特有の5GHzの気象レーダーを回避する機能も、たいていは持っている(※)。初めて選ぶ1台なら、まずこちらをお勧めする。

 海外メーカーの良いところは、コストパフォーマンスが良いことだ。世界規模で販売しているので、おのずと価格も安くなりやすい。しかも、新しい高速規格の製品をアグレッシブに投入してくる。日本には未導入の高機能モデルも多い。ただ、設定画面やアプリが完全に日本語対応になっていないケースもあったり、サポート体制も代理店次第。慣れていて使いこなせるならお勧めだ。また、端末が大きめのモデルが多いので、サイズをよく確認して購入して欲しい。通販の写真だけで判断すると、届いて「デカっ!」とビックリすることもある。

 ちなみに、Wi-Fiルーターは電波を発する製品なので、電波法の関係で基本的に国外製品を持ってきたままの状態では利用できない。総務省の「技術基準適合証明」を受けたマークが付いているモデルのみ利用可能だ。海外メーカーでも、国内で正式に販売されているモデルは問題ないが、オークションなどで手に入れる並行輸入品には注意する必要がある。

※海外製品では、この気象レーダーの5GHzの一部バンドは対応せずバッサリ切ってしまっている製品もある。

 Wi-Fiの接続設定方法の1つに、親機と子機のボタンをプッシュするだけで接続設定を済ませる機能がある。これが以下の3種あるので、少し注意する必要がある。

  • Wi-Fiアライアンス「WPS」
  • バッファロー「AOSS2」
  • NEC「らくらく無線スタート」

 この中の「WPS(Wi-Fi Protected Setup)」に関しては、世界規模で多くの機器が対応しているので、海外製品を含め幅広く使えるケースが多い。逆に言えば、海外製品はWPSにしか対応していない。スマホで見ると、Androidが対応していて、iOSは未対応。バッファローとNECの機能が使いたければ、この2社から選ぶことになる。特に「AOSS2」では親機のボタンを押すだけで、表示されるSSIDさえ選べば接続できてしまうので、とにかく繋いでしまいたいなら分かりやすい。

Wi-Fiルーターに付いているAOSS2(写真上)とWPS(写真下)のボタン

 ただ、これら簡単接続機能は微妙な難点もある。PCやスマホのようにアプリで対応できればいいのだが、プリンターやゲーム機、AV機器などで特定の簡単接続機能を持たない機器を追加する際に、ボタンで接続できないので、手順が少し厄介になる(例えば前述のiOSでWPSを使いたいなどだ)。全く追加接続できないワケではなく、オーソドックスにSSIDとキー入力になるので、自動生成された文字列が判別しにくかったり、長くて入力が面倒だったりする。シンプルに設定を手動でして分かりやすい文字にするか、あくまでボタンの利便性をとるか最初に決めておくとよい。スマホとPCを数台繋ぐだけならボタンによる簡単設定を選び、AV機器やWi-Fiデバイスを多数追加していきたいなら、SSIDとキーの設定を手動で決めておいたほうが後々使いやすいだろう。初回の接続のみ簡単接続機能を活用し、接続したら任意のSSIDとキーに変更するという手法も考えられる。

 1つ注意点として、WPSのボタンではないPIN(数字)認証には脆弱性が報告されているので、接続時のみ機能をオンにするなど工夫して欲しい。いずれにしても機器追加時以外、これらの簡単接続機能はオフにしておくのが無難。簡単のようで、長く使いこなしていくにあたっては実は簡単でもないのが、これら簡単接続機能だったりする。

 メーカー選択では、この簡単接続機能以外、Wi-Fiルーターのデザインやサイズ、サポートをどれだけ重視するかなどで単純に気に入るかどうかで決めてしまっていい。デザインとサイズは、リビングなどに置くならけっこうポイントとなる。電波を使う関係で棚の奥などに隠すワケにもいかない。Wi-Fi部分はスペックが同じなら、ほぼ同じ。ツウなら設定画面の使いやすさなど選ぶポイントはいろいろあるが、設定画面など最初の接続時以外見ないのであまり気にしなくていいだろう。簡易NASのような付加機能なども、NASを使いたければ後ほどNASを購入したほうが格段に便利で、結局のところWi-Fiルーター搭載の機能は使わなかったりする。

 複数購入する場合や中継器、子機を追加する際などは、同一メーカーでそろえておけばトラブルは少なくなる。Wi-Fiで接続が認証されていても、まれに相性問題は起こるからだ。ラインアップが多いメーカーのほうが後々のことを考えると良いだろう。

 メーカーをある程度しぼったら、通信速度や機能などからモデルを選択するのだが、こちらは次回以降見ていこう。iPhoneやiPadでの使いやすさも語っていこうと考えている。

今回の教訓(ポイント)

「国内で実績のある国内メーカーかアグレッシブな海外メーカーか、好みでWi-Fiルーターのメーカーを絞っていこう」
デザインやサイズの好みは意外と重要。簡単接続機能を期待しているなら、この機能を持つメーカーを選択する。

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。