自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

第9回

失敗しないWi-Fiルーターの製品選び(3)

高性能Wi-Fiルーターの選択もアリなのか考える

 前回まで2回続けてWi-Fiルーター選びのコツを見てきた。国内と海外のメーカーでの違いや、iPhoneでアップル製品を選ぶと少し便利に使えることなどを解説した。今回は、選ぶときにやはり気になる高性能なWi-Fiルーターは、どんな人に必要なのかをお伝えしていきたい。高性能モデルは現在、海外メーカーがこぞって国内に投入してきている。

 高性能なWi-Fiルーターは、まず見た目から大きく違うのでスグに判別できる。通常は小さめのお弁当箱程度の大きさだが、いきなりモバイルノートPCや据え置きゲーム機程度の大きさがあり、特徴として10cm程度の長さのあるアンテナをストリーム数だけ3~8本外部に装着して使う目立つ作りになっている。

MU-MIMO対応のTP-Link「Archer C3150」は、MIMO 4×4で2.4GHzと5GHzの合計で最大3150Mbps、5GHzのみで2167Mbps通信まで可能。横の電話機子機と比べるとサイズ感が分かるだろう。意外と大きめ。定価は3万7600円だがAmazon.co.jpで2万を切る実売価格。TP-Linkは中国・深センの企業

 11n時代初期の頃はスタイリッシュさを求めて、アンテナは筐体の中に収められていたが、複数アンテナを使って効率よく送受信するMIMOによる高速化が流行してからは、その性能をいかすために高機能モデルでは外部アンテナを採用するモデルが多くなった。ありていに言えば、外部アンテナの最新モデルなら高速通信を狙った高性能モデルと見てよいだろう。
 テレビやラジオと異なり利用する周波数が5GHzや2.5GHzと高いので、アンテナが長いから送受信が効率よくいくかというと必ずしもそうでもなく、内蔵されていても十分な性能を発揮する。とは言っても、やはり外部にあって条件により向きを変えられたほうが、どんな悪条件にも対応しやすい。

 まず考えるのは、高性能モデルがたたき出すギガビット超えのWi-Fi速度が必要かどうかだが、スマホやタブレット利用のみだと完全にオーバースペックだ。端末側でMIMO 3x3以上に対応しているモデルは今後増えるとは思うがまだ少し先。PCの利用で対応したアダプタを装着することで、はじめてその速度にて接続できる。また4K対応のテレビとかAmazon Fire TVのような端末を接続したいケースなども恩恵がある。Wi-Fiの速度に関して詳細は連載第3回を参照して欲しい。

デスクトップPCに内蔵させるタイプのWi-Fi子機。TP-Link「Archer T9E」。11acの5GHzでギガビット超えの1300Mbps通信が可能。高速なWi-Fiを使うには子機側の対応も必須。装着状態はイメージだが、写真のように内部スロットに挿す。難易度はやや高め

 別の有効な速度の生かし方としては、同一規格の高速Wi-Fiルーター同士で無線接続して、片側を中継器として使う手法。一軒家の1~3階間で高速なWi-Fi通信をし、それらにぶら下がるように有線LAN機器を繋ぐとAV機器やPC間で高速な転送ができるようになる。部屋間を高速な無線で繋ぐイメージだ。

 実は、速度より重視して欲しいのが同時に使う人数と機器の数だったりする。高性能モデルはこの同時処理性能がだいぶ違う。同時に多人数で使うファミリーや親族2世帯で兼用しているとかでWi-Fi接続する端末が多いと、普及モデルではひっかかるような遅れを感じるようになってくる。メーカーが公表している同時接続可能台数はあくまでも目安。台数が増えるにつれ遅くなる傾向にある(そもそもネット回線も同時接続で遅くなるが)。ファミリーならMIMO 3×3以上を選んだ方が安定して接続できるようになるので、お勧めしたい。

 あまりに激しく同時アクセスすると、夏場などにハングアップするということもあり得る。まれにだが、筆者も経験済みだ。この同時通信時の安定度を重視したいなら、高性能モデル選択の理由になる。実はここが一番重要。最近は、PCやスマホだけでなく、TVでのネット動画視聴、音楽ストリーミング、ゲーム機器とさまざまな端末がWi-Fi接続を利用する。単純にスマホの利用人数だけでなく、こういったWi-Fi使用機器の利用頻度も考えておく必要があることは言うまでもない。

スマホでの理論値でのリンク速度は、この程度行けばまぁいいほう。高性能Wi-Fiルーターに対しては完全にオーバースペックだが、複数同時接続では安定するので意義がある
筆者の自宅LANに接続中の機器数。2人での利用で必ずしも同時に使うものばかりではないが、13台がオンライン状態。Wi-Fi接続機器は増える一方

 もう1つは電波の強さというか、MIMOの性能の高さから電波の“掴み”が良くなるメリットがある。電波の送信出力は規定があるので、出力に大きな違いはないが(出力はそもそも子機側も対応しないと意味がない)、MIMOの処理性能と外部アンテナのおかげで安定した通信が広めのエリアでできるようになる。特に「MU-MIMO」と呼ぶ、複数接続でも安定して通信できるようにする技術や、通信中の特定端末に電波を集中させる「ビームフォーミング」という技術を使っている製品も多い。ただ、MU-MIMOもスマホ側で対応していないと恩恵がなく、まだ対応端末は少なめだ。

 単にエリアを広げる目的のみであれば、今後の連載で扱う予定の中継器を追加するという手法も有効。普及モデルに安価な中継器を追加して、必要なエリアを拡張したほうが安くつくこともある。

TP-Link「Archer C3150」の4ストリームの4本アンテナ。高性能なモデルは、このように自由な向きに角度を変えられるアンテナを装備したモデルがほとんど。ロッド上方向に強く出るので、例えば上階など、よく使う方向に向けると良い

 もちろん高性能モデルはそれなりに高価なので、本当に必要かどうかは、よく見極めてから導入して欲しい。長く使うことを考え、先行投資的に考えての導入も悪くはない。今後、高速通信対応機器で4K動画視聴などをするときに威力を発揮するだろう。

 高価格という以外のデメリットを考えてみると、サイズが大きいので設置場所の面積がいることや、ツノのように飛び出したアンテナがデザイン的にイヤだという人もいるだろう。消費電力も大きめだということもある。このあたりを天秤にかけて判断して欲しい。

 ほかには、高機能モデルは、USB外付けハードディスクなどをWi-Fiルーターに接続すると共有できるNAS機能を持っていることが多い。このNAS機能は、スマホで利用すると意外と便利で、高速なWi-Fiを有効に使えるのでぜひチェックしておこう。

今回の教訓(ポイント)

「ファミリーでヘビーに使うなら高性能Wi-Fiルーターも視野に入れよう」
スマホでのWi-Fi通信速度はオーバースペックだが、同時多人数接続で安定して動作する。

村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。