自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

第32回

スマホの時刻を自動で合わせるには

今回も時刻合わせの話。新しめのスマホなら、Wi-Fiでもモバイル回線でも、自動で合う仕組みがある

 前回、Wi-Fiルーターの時刻を自動で合わせる方法について解説した。今回はこの自動時刻合わせをスマホを使う観点から考えてみよう。Wi-Fiルーターの設定からは離れるが、Wi-Fi接続状態でスマホを使いこなす上で知っていて損はないテクニックだ。

 スマホの場合、前回の連載で時刻合わせにNTPサーバーを使うと言ったが、厳密に言うと、それはモバイル回線ではなくWi-Fiでネット接続している状態のときに限る。モバイル回線では、NITZ(Network Identity and Time Zone)という規格を使って、キャリアが提供する電話回線網内で自動的に時刻を合わせてくれている。ガラケー時代にも勝手に時刻が合っていたと思うが、それと同じ仕組みだ。設定で「日付と時刻を自動設定」する設定にしておくとこの状態になる。

 早い話が最新のスマホであれば、深く考えずともオンラインになれば、自動で時刻が合う仕組をもっているということになる。

 この自動時刻合わせに対応しているかどうかを確認したいときは、いったんフライトモードにして、Androidは[日付と時刻の自動設定]を、iOSでは[日付と時刻]内の[自動設定]を切った状態にして、手動で時刻を数分[*1]変更する。その後、先の[日付と時刻の自動設定]などをオンした瞬間に、時刻が修正されればNITZが利いている。Wi-Fi接続時にでNTPサーバーを使っているかどうかは、一時スマホからSIMを抜きWi-Fiをオフにした状態にして[*2]、上記と同じようなことを試してみるとよい。Androidの場合には自動設定の設定とは無関係に、Wi-Fiに接続したときに時刻が合う。iOSでは[日付と時刻]内の[自動設定]のオンにすることで時刻が合うのが確認できるはずだ。

[*1]……15分以上離れた時刻変更をしないようにする。タイムゾーンの変更が無いにもかかわらず、あまりにもかけ離れた時刻だと、システム異常とみなして自動時刻合わせをしなくなる作りになっているケースもあるからだ。

[*2]……モバイル通信をオフにしていても、SIMが刺さっていれば3G回線接続でNITZは動作する。

iOSの[設定]の[日付と時刻]にある[自動設定]
Androidの[設定]の[日付と時刻]にある[日付と時刻の自動設定]

 スマホではWi-Fi接続時に使われるNTPサーバーに関する設定はできず、Androidの場合「pool.ntp.org」、iOSでは「time.apple.com」などが使われている。「pool.ntp.org」は、NTPサーバーへ負荷が集中しないようにする有志による仮想クラスタで、登録された多数のNTPサーバーをアクセスごとに切り替えて利用するNTPプールと呼ばれる仕組みだ。例えば、日本からなら「0.jp.pool.ntp.org」とアドレスを指定すれば、日本のNTPサーバーが順次切り替わって利用される。前回紹介したNICTのNTPサーバーとともに設定できる場合には、こちらの設定も推奨しておきたい。

 ちなみにスマホではAndroidもiOSも、Wi-Fi接続であれモバイル回線であれ、最新OSではアプリを使った時刻合わせはできない仕組みになっている。NTPサーバーにアクセスして正確な時刻を取得できる時計アプリで時刻を参照することまではできるが、その時刻でシステムの時刻を自動で合わせることはできない。

 そのため問題となるのは、Wi-Fiにしか接続できずNTPサーバーで時刻合わせのできない古いタブレットなどだ。古くなったスマホからSIMを外しWi-Fi運用しているケースも同じ。これらは、複数画面を表示し難いスマホではなかなか難しいのだが、NTPサーバーが使える時計アプリで時刻を表示させ、うまく手動で合わせるしかない。

 ちなみにiOS系では、パソコンのiTunesに接続すると、接続したパソコンの時計と同期する仕組みになっている。古めのiPhoneをWi-Fi運用している場合には、時々パソコンと同期をとることをオススメする。

iOS向けのNTPクライアントアプリ「Emerald Time」。NTPプールサーバーにアクセスして、時刻を表示する様子が見える

 スマホの時刻合わせは何もしなくてイイよ、だけではつまらないので、最後にちょっとオマケを。スマホの時刻を正確に合わせたら、以下に紹介するアプリを使うと、電波時計の時刻合わせに活用できて便利だ。電波時計は東北と九州から発信される長波[*3]の電波を受信することで日時を合わせるのだが、場所によっては電波の入りが悪い場合がある。これをスマホから13kHzの音を出して代用しようというアプリだ。イヤホンを強制受信モードにした電波時計に近づけて音を聞かせる。うまくいけばイヤホン無しで音を出してもいける。どこでも好きなときに電波時計の時刻を日本標準時に合わせられるのでとても便利。ちなみに「JJY」は、日本標準時放送局のコールサイン。情報通信研究機構(NICT)が管理している[*4]

[*3]……「艦これ」の「ながなみ」ではなく「ちょうは」である。AMラジオの中波より低い(長い)周波数のこと。福島県おおたかどや山が40kHz、佐賀県はがね山が60kHzで送信されている。

[*4]……2001年以前は短波放送の5、8、10MHzなどで、1秒間隔の「コッコッコッ」という音と1分を知らせる「ポー」という音が常時放送されていた。正確な時刻だけでなく、電波の周波数校正や電波伝搬の状態を知るためにも便利だった。

JJY Simulator

今回の教訓(ポイント)

新しめのスマホやタブレットはWi-Fiでもモバイル回線でもネットに繋がると時刻が合う
古いスマホのWi-Fi運用では、時刻のズレに注意する。

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。