自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

第36回

Wi-Fiが二重ルーターになっているか、実際の確認方法は?

 前回までの2回で、自宅Wi-Fiが二重ルーターになっているかの概要と確認に利用するツールを紹介した。今回は実際の確認方法を見てみよう。表示された画面は、ちょっと怪しい数値が並んでいるが、見方が分かればまったくもって難しいことはない。

自宅Wi-Fiが二重ルーターになっているかの確認は、経路が表示できればカンタンだ。とはいっても、猫でもチェックできるワケではないが

 前回、「traceroute」コマンドの結果を表示するアプリを紹介した。このtracerouteは、指定したサーバーまでの経路を近いものから順番に表示している。

 インターネットの特徴は、網の目というかクモの巣というか、多数のサーバーやルーター[*1]が相互に繋がっていて、戦争などを想定し経路途中で1カ所の機能が失われても別の経路を使ってアクセスできるような仕組みになっている。なんとなくイメージしているのではないかと思うが、そのインターネットの仕組みのとおり、サーバーまでの実際の経路リストが表示されている。

 この時点で気が付いたかと思うが、ウェブページを見るだけでこれだけたくさんのルーターを経由しているわけで、自宅内でルーターが1台余計にあったとしても、大騒ぎするほどでもないというのは、このような理由だ。後々の利便性のために、家庭内のルーターを1つに限定しておく作業だととらえておこう。

[*1]……ゲートウェイと呼ばれる装置のこともある。ゲートウェイは異なるプロトコル(通信する方式のこと。例えばインターネットで使われているのはTCP/IPというプロトコル)を変換してくれる。自宅のLANとWANを変換してくれている部分は「デフォルトゲートウェイ」と呼ばれている。機器のLAN接続設定で出てくることがあるので覚えておこう。ルーターはプロトコルの変換はしない装置。

 実行結果を見てみよう。「192.168.xxx.xxx」のルーターが2つ並んでいるなら、自宅内が二重ルーターになっている。1つしかない場合には、もちろん1つだけなので、このまま対処しなくて構わない。

Fingを使った経路検索結果。自宅内のルーターが1つの場合
自宅内のルーターが2つある場合

 わかりにくいと思うので、画面の必要な部分を拡大してみよう。「192.168.xxx.xxx」の次に「118.23.xxx.xxx」という別の数値に切り替わっている。この数値は各自異なるが、プロバイダーが提供しているWAN側のIPアドレスと同じになっている。

自宅内のルーターが1つの場合。「192.168.xxx.xxx」が1つだけ
自宅内のルーターが2つある場合。「192.168.xxx.xxx」が2つ並んでいる。ただし、以下の解説のように「192.168.~」以外もあるのでちょっとだけ注意する

 「192.168.xxx.xxx」という数値は、プライベートIPアドレスと呼ばれ、自宅のLAN内だけで通じるIPv4のIPアドレスだ。自宅のLAN内でバッティングしない限り、自由に設定できる[*2]。主に「192.168.~」が使われるが、以下の3種が用意されているので、チェック時によく確認しておこう。過去にApple製品で「クラスA」が初期値のルーターがあった経験がある。

 つまり1番目と2番目の数値が以下のいずれかだと、自宅内のルーターが2つあることになる。ほとんどの製品は「192.168.~」を使っているので、あまり気にすることはないが、いちおう覚えておくといいだろう。先頭が「192」「172」「10」の場合プライベートIPアドレスかもしれないと予想がつく。

 「192.168.0.0 ~ 192.168.255.255」(クラスC)
 「172.16.0.0 ~ 172.31.255.255」(クラスB)
 「10.0.0.0 ~ 10.255.255.255」(クラスA)

[*2]……このまま好評で連載が続けば……だが、後ほど、このプライベートIPアドレスをLAN内で操作する方法もお教えしてみたい。しかし、なんでこんな変な値の数字の羅列なのかと思うかもしれないが、これは機器がなるべく高速に計算できる2進数と、人が判別しやすい10進数の折衷案であみ出された苦肉の策の表記だったりする。

 また、今回使っているアプリの「Fing」では表示されないが、tracerouteではルーターのレスポンス時間が表記されるものもある。この場合、どこで時間がかかっているかがわかる。家庭内の二重ルーターと思われる部分で時間がかかっているようであれば、二重ルーターを解消するようにするとよい。

 ちなみにだが、iOSの元となっているmacOSとAndroidの元となっているLinuxともに、tracerouteコマンドはIPv4向けとなっていて、IPv6向けは「traceroute6」というコマンドが別に用意されている。Windows Power Shellの「tracert」では、「tracert -4」でIPv4で表示され、「tracert -6」でIPv6になる。パソコンのターミナルを活用する機会があったら、頭の隅に入れておくといいと思う。オプションを何も付けないとIPv6で表示されることもあり、この場合、プライベートIPアドレスの判別がつきにくい。

 最後に注意点だ。ここまでやっているtracerouteで調査することは問題無いが、この後のLAN内機器を操作するにあたって、もしネットワーク管理者がいる環境では操作しないようにして欲しい。企業などでネットワーク管理者がいて管理しているLANに接続しているケースでは、そもそも二重ルーターなどという問題は出てこない。家庭でも敷地が広めだったり、母屋と離れなどで分割されていたり、自宅で店舗をしているなどのケースで、すでにネットワーク業者などによりLANが構築されている場合も同様だ。ここで調査したような二重ルーター状態に見えることがあっても、勝手に判断してちゃんと設計されたLANの構成を変更することは止めて欲しい。複数のルーターでプライベートIPアドレスを区分して使い分けたりするのは、珍しいことではない。わざわざ複数のルーターで区別している場合、その状態を壊してしまう。

 本連載では、あくまでも自分ですべて管理しなくてはならず、回線接続機器に対して単純に家庭向けWi-Fiルーターを接続している形態の家庭内LANを想定している。次回は、実際に二重ルーターを解消してみる。

今回の教訓(ポイント)

経路に「192.168.~」が2つ表示されると自宅内が二重ルーターになっている
もし会社などでネットワーク管理者がいる場合にはLANの操作はしないように。

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。