サポート終了カウントダウン(Office 2010編)

Office 365のライバル、G Suiteのオフィスアプリケーションの完成度は?

 法人でOffice 365の導入について検討する際、同様のサービスとして視野に入るのはGoogleが提供する「G Suite」でしょう。メールの送受信やスケジュール管理、クラウドストレージの機能を備えるほか、ワープロや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトも用意されています。ここでは、特にオフィスアプリケーションの観点から、Office 365との違いをチェックしてみましょう。

ウェブアプリケーションのオフィスソフトを提供する「G Suite」

 G Suiteが提供する主なオフィスアプリケーションには、ワープロの「ドキュメント」表計算ソフトの「スプレッドシート」、プレゼンテーションソフトの「スライド」があります。大きな特徴は、いずれもブラウザーで動作するウェブアプリケーションとして提供されている点で、Microsoft Officeのようなデスクトップアプリは存在しません。

G Suiteのオフィスアプリケーションを利用する際の起点となるのは「Google Drive」。文書の新規作成は、「新規」ボタンから利用するオフィスアプリケーションを選ぶ

 ウェブアプリケーションというと、使い勝手が気になるユーザーは多いでしょう。実際の操作でそれほど意識することはありませんが、Microsoft Officeのデスクトップアプリと比べると、文字入力や機能を選択したときのレスポンスの面で、若干待たされる感覚があるのは事実です。ただ、それほど大きな差ではなく、使い続けていれば十分に慣れる範囲ではないでしょうか。

 なお、G Suiteのオフィスアプリケーションのユーザーインターフェースは、一般的なメニュー式のものです。「ファイル」、「編集」、「表示」といったメニューから、利用する機能を選択します。メニューの下には、よく利用する機能が並ぶツールバーも用意されています。

Microsoft Officeのようなリボンインターフェースではなく、メニューから機能を選択する

 こうしたユーザーインターフェースは一般的なものであり、特に使いづらさを感じることはないはずです。ただ、現在のMicrosoft Officeのリボンインターフェースに慣れているユーザーには、やや違和感があるかもしれません。

「ドキュメント」「スプレッドシート」「スライドの機能

 では、具体的に各アプリの機能を見ていきましょう。まず、ドキュメントは一般的なワープロソフトとしての機能がほぼ網羅されており、基本的な文字装飾から段落スタイルの設定、画像や表の挿入などが用意されています。図形を作成して文書に貼り付けることも可能です。ただ文書に直接描画するWordと異なり、ドキュメントではいったん別ウィンドウに図形を描画し、その内容を文書に貼り付けるかたちになります。この点はWordと比べると使いづらさを感じる部分です。

画像や表、グラフなどを文書に貼り付けられる
図形描画時には、サイズや位置調整に利用できるガイドラインが表示される

 スプレッドシートは一般的な表計算ソフトという印象で、セルに数式を入力して計算ができるのはもちろん、データベースやテキスト、数学、統計、日付などのカテゴリーに分けられた約470種類の関数も利用できます。さらに、ピボットテーブルを作成する機能もあるほか、マクロの仕組みも組み込まれています。

スプレッドシートのピボットテーブル。簡単に集計を行うことができる

 ビジネスシーンで利用することが多いグラフ作成機能についても、折れ線や面、縦棒、横棒、円、散布図、地図といったカテゴリーがあり、一般的なグラフの作成であれば、まず困ることはありません。凡例や横軸/縦軸のカスタマイズ、グリッド線の表示、系列ごとの色の変更といった機能も利用できるので、好みに合わせたグラフを作成できるでしょう。

縦棒と折れ線を組み合わせた複合グラフも作成できる

 プレゼンテーションソフトであるスライドは、図形やテキストボックス、画像などをドキュメント上に貼り付けて資料を作成していくアプリケーションで、Microsoft OfficeのPowerPointに相当します。

 基本的な図形描画、テキストの入力、YouTubeやGoogle Drive内の動画の貼り付けも可能なほか、グラフや表を作成する機能も備えています。ドキュメント全体のデザインを簡単に変更できる「テーマ」の機能も便利でしょう。

決して種類は多くないが、スライドに対して切り替え効果を設定したり、オブジェクトをアニメーションさせたりすることも可能

 プレゼンテーションは、ウェブブラウザーから直接実行することも可能で、その際にはスライドに割り当てた切り替え方法や、オブジェクトに対して設定したアニメーションも実行されます。

全画面表示でのプレゼンテーションも行える。ファイルをオフラインモードにしておけば、インターネット回線がない環境でもプレゼンテーション可能だ

他社とのファイルのやり取りをどう考えるかが選択の鍵

 長年の積み重ねがある上、現在も積極的に新機能を追加しているMicrosoft Officeと比較すると、G Suiteで提供されるオフィスアプリケーションは機能が豊富とは言えません。ただ、不便というほどでは決してなく、日常的な業務での利用であれば困ることは少ないのではないでしょうか。

 ただし、Microsoft Officeを使わず、G Suiteのオフィスアプリケーションだけで業務を行うと考えたとき、最も困るのは他社とドキュメントをやり取りするときでしょう。それぞれWordやExcel、PowerPointのファイルを取り込んで表示・編集することはできますが、オリジナルの内容が正しく再現されなかったり、場合によっては内容を読み取れない可能性もあります。

左がWordで作成したオリジナルファイル、右がそのファイルをG Suiteの「ドキュメント」アプリで開いたところ。左上の矢印の形や、その右のテキストボックス内の文字の位置、右下の囲みの位置などが異なる

 現在のビジネスシーンでは、WordやExcel、PowerPointのファイルフォーマットが、ファイルをやり取りする際の事実上の標準として機能していることを考えると、外部から送られてきたファイルを正しく読み込めないことは業務上の支障につながる恐れがあります。この点をどう考えるかが、Office 365とG Suiteの選択における大きなポイントとなるでしょう。

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川添 貴生