自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第2回

Wi-Fi電波の飛びを少しでも改善しよう

 さて、使いこなし編の幕開けでは、Wi-Fiの電波状況をよくすることにフォーカスして、しばらく解説を進めてみよう。これまでは、とにかく繋げることを優先していたので、うんちくは横に置いていた。今回は少しお勉強モードで、電波ってモノを少し知っておけるよう、簡単に解説してみたい。

Wi-Fiルーターの電波をもっと安定させたい。その前にWi-Fiでの電波の特性を簡単に把握してみよう

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 お勉強と言っても大したコトではない。Wi-Fiを使いこなす上で知っておけば、トラブル解決に役立ちそうな特性を、前提として把握しておこうという程度だ。Wi-Fiは電波という目に見えないモノを使っている以上、その性質を知っておくことは何かと有効なのだ。

 Wi-Fiを使い始めるとわかるが、思っているほど電波は飛ばない。とはいえ、飛ばないなりに電波の特性を知っておけば、Wi-Fiルーターの設置場所を工夫することで、電波の飛びを改善することはできる。

 まず、現在主流で使われている「IEEE 802.11ac」の規格では、5GHz帯という、とても高い周波数を使っていることを知っておこう。どれだけ高いのかといえば、ある意味で光の特性に似ている。その前に主流を占めていたIEEE 802.11nは、5GHz帯と2.4GHz帯の両方に対応していて、より低い周波数も使っている[*1]

[*1]…… 2.4GHz帯は極超短波(UHF)だが、5GHz帯はマイクロ波(SHF)の範疇で、周波数としての特性が違い、波長で言えば短く振動する。ちなみに、30GHz帯より上はミリ波であり、レーダーに使われるものだ。

 電波は本来、障害物がなければ直進していき、距離に応じて減衰する。金属にぶつかると反射するが、木や紙、ガラスなどには透過して、障害物の反対側にも電波が届くという性質を持っている。

 ポータブルラジオで、FM放送が部屋の中でも何となく受信できるのは、こうした電波の性質によるものだ。ただし、ラジオが使っているのは、Wi-Fiよりもかなり低い周波数で、障害物の影響を受けにくい。周波数が高くなると光の特性に近くなり、電波の持つ直進と反射の特性が強くなっていく。

 しかも、周波数が高ければ、距離が短いと特性がより強く起き、減衰も激しくなる。低い周波数では、この逆で、難しく言えば減衰は周波数の2乗に比例する。つまり、同じ出力とアンテナ利得なら、低い周波数ほど反射で不安定ながら、何だかんだと遠くまで電波が届くわけだ。

Wi-Fiの電波はガラスは通る。ガラスが間にある場所では特に問題なく利用できるので、あまり気にしなくていい。ただ、このガラスに金属の網が埋め込まれていたりすると、とたんに電波が弱くなる

 これまでの内容を受けた結論としては、2.4GHz帯の方が遠くまで届き、5GHz帯はモノの影響を受けやすいが、近距離で安定して届くというのが、大ざっぱな特性になる。5GHz帯の電波は、そもそもの特性として、そんなに遠くまで飛ばないのだ。

 例えば、ワケあってWi-Fiルーターとの距離が長くなる場合、速度には目をつぶって2.4GHz帯に限定して11nを使うと、何とか繋がったりすることがある。快適かどうかは別にして、とにかく繋がることを優先すれば、こういう方法もあるワケだ。

 こう聞くと、2.4GHz帯の方が良さそうな感じがしてしまうが、この帯域は、メッチャ混んでいるという難点がある。2.4GHz帯を使っているのは、Wi-Fiだけではないのだ。ワイヤレスヘッドホンなどでも使われるBluetoothや、電子レンジの影響も受けやすい。免許不要の小電力データ通信でも、2.4GHz帯を使うことが多い。しかも、使える帯域幅が狭いのだ。これについては、次回以降に触れていこう。

石膏ボードは、コンクリートに似て電波を通しにくい。ただし、たとえ木材であっても、アンテナを遮断するように棚の奥に置くのは、電波にはかなりよくない状況だ

 Wi-Fiルーターは、周囲に障害物がない状態で設置するのが原則。金属製ラック棚の奥に設置するような状況は、電波を周囲に飛ばないようにしているようなもので、最もよろしくない。

 金属などに反射してガラスは通るという特性を考えると、窓際に置くならアルミ製のブラインドを使うと、外に漏れにくく室内側に電波が反射する。この反射するという性質をうまく使うことで、少しではあるが遠くまで電波を飛ばせるようになるわけだ。

 つまり、室内に反射するので壁際に置くのはいいが、ガラス窓の横だと屋外側にダダ漏れになって室内側に反射しない。可能であれば金属製のつい立てのようなパネルを壁側に置けば、最も効率よく反射するようになるはずだ。

 また、部屋の間で電波を通したいなら、電波が通り抜けやすいようにドアは開けておき、仕切りは薄いカーテンにしておくとか、Wi-Fiを最優先するならリフォーム時になるべく壁を少なくするというのが有効だ[*2]

[*2]……部屋間を有線LANで繋いでおき、各部屋にWi-Fiアクセスポイントを置くとさらに効率的だ。部屋間を繋ぐ構築手法は、おいおい触れていきたい。

今回の教訓(ポイント)

Wi-Fi電波をうまく飛ばすには、金属や壁に反射してガラスは透過する性質を利用する
Wi-Fiルーターの周囲は障害物をなくして、使う側に反射させるように工夫するとベスト

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。