自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!
【使いこなし編】第2回
Wi-Fi電波の飛びを少しでも改善しよう
2019年3月11日 06:05
さて、使いこなし編の幕開けでは、Wi-Fiの電波状況をよくすることにフォーカスして、しばらく解説を進めてみよう。これまでは、とにかく繋げることを優先していたので、うんちくは横に置いていた。今回は少しお勉強モードで、電波ってモノを少し知っておけるよう、簡単に解説してみたい。
「自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ! 使いこなし編」連載記事一覧
- 第1回:これから、Wi-Fi使いこなし編が始まります!
- 第2回:Wi-Fi電波の飛びを少しでも改善しよう
- 第3回:Wi-Fiルーターのアンテナで電波の飛びを改善しよう
- 第4回:Wi-Fiルーターとスマホで電波の反射効果を実験してみる
- 第5回:電波の出力は強けりゃイイってもんじゃない。
- 第6回:Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(チャンネル状況確認編)
- 第7回:Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(チャンネル設定編)
- 第8回:Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(Amazon Echoの5GHz帯接続編)
- 第9回:Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(iPhone編)
- 第10回 Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(モバイルWi-Fiルーターでの注意点)
- 第11回:Wi-Fiの電波の強さを正確に把握しよう(Wi-Fi電波強度の測定)
- 第12回:Wi-Fiの電波の強さを正確に把握しよう(間取り図の作成)
- 第13回:Wi-Fiの電波の強さを正確に把握しよう(ヒートマップの作成)
- 第14回:Wi-Fiの電波の強さを正確に把握しよう(Wi-Fiルーターの位置調整)
- 第15回:Wi-Fi中継機でエリアを拡張しよう(Wi-Fi中継機の用意)
- 第16回:Wi-Fi中継機でエリアを拡張しよう(Wi-Fi中継機のセットアップ)
- 第17回:Wi-Fi中継機でエリアを拡張しよう(Wi-Fi中継機の位置調整)
- 第18回:メッシュWi-Fiを活用しよう(中継機との違いと選び方)
- 第19回:メッシュWi-Fiを活用しよう(メッシュWi-Fiをネット回線に接続)
- 第20回:メッシュWi-Fiを活用しよう(メッシュWi-FiのSSIDを設定)
- 第21回:メッシュWi-Fiを活用しよう(メッシュWi-Fiにサテライトを追加)
- 第22回:メッシュWi-Fiを活用しよう(電波エリアはどのくらい広がった?)
お勉強と言っても大したコトではない。Wi-Fiを使いこなす上で知っておけば、トラブル解決に役立ちそうな特性を、前提として把握しておこうという程度だ。Wi-Fiは電波という目に見えないモノを使っている以上、その性質を知っておくことは何かと有効なのだ。
Wi-Fiを使い始めるとわかるが、思っているほど電波は飛ばない。とはいえ、飛ばないなりに電波の特性を知っておけば、Wi-Fiルーターの設置場所を工夫することで、電波の飛びを改善することはできる。
まず、現在主流で使われている「IEEE 802.11ac」の規格では、5GHz帯という、とても高い周波数を使っていることを知っておこう。どれだけ高いのかといえば、ある意味で光の特性に似ている。その前に主流を占めていたIEEE 802.11nは、5GHz帯と2.4GHz帯の両方に対応していて、より低い周波数も使っている[*1]。
[*1]…… 2.4GHz帯は極超短波(UHF)だが、5GHz帯はマイクロ波(SHF)の範疇で、周波数としての特性が違い、波長で言えば短く振動する。ちなみに、30GHz帯より上はミリ波であり、レーダーに使われるものだ。
電波は本来、障害物がなければ直進していき、距離に応じて減衰する。金属にぶつかると反射するが、木や紙、ガラスなどには透過して、障害物の反対側にも電波が届くという性質を持っている。
ポータブルラジオで、FM放送が部屋の中でも何となく受信できるのは、こうした電波の性質によるものだ。ただし、ラジオが使っているのは、Wi-Fiよりもかなり低い周波数で、障害物の影響を受けにくい。周波数が高くなると光の特性に近くなり、電波の持つ直進と反射の特性が強くなっていく。
しかも、周波数が高ければ、距離が短いと特性がより強く起き、減衰も激しくなる。低い周波数では、この逆で、難しく言えば減衰は周波数の2乗に比例する。つまり、同じ出力とアンテナ利得なら、低い周波数ほど反射で不安定ながら、何だかんだと遠くまで電波が届くわけだ。
これまでの内容を受けた結論としては、2.4GHz帯の方が遠くまで届き、5GHz帯はモノの影響を受けやすいが、近距離で安定して届くというのが、大ざっぱな特性になる。5GHz帯の電波は、そもそもの特性として、そんなに遠くまで飛ばないのだ。
例えば、ワケあってWi-Fiルーターとの距離が長くなる場合、速度には目をつぶって2.4GHz帯に限定して11nを使うと、何とか繋がったりすることがある。快適かどうかは別にして、とにかく繋がることを優先すれば、こういう方法もあるワケだ。
こう聞くと、2.4GHz帯の方が良さそうな感じがしてしまうが、この帯域は、メッチャ混んでいるという難点がある。2.4GHz帯を使っているのは、Wi-Fiだけではないのだ。ワイヤレスヘッドホンなどでも使われるBluetoothや、電子レンジの影響も受けやすい。免許不要の小電力データ通信でも、2.4GHz帯を使うことが多い。しかも、使える帯域幅が狭いのだ。これについては、次回以降に触れていこう。
Wi-Fiルーターは、周囲に障害物がない状態で設置するのが原則。金属製ラック棚の奥に設置するような状況は、電波を周囲に飛ばないようにしているようなもので、最もよろしくない。
金属などに反射してガラスは通るという特性を考えると、窓際に置くならアルミ製のブラインドを使うと、外に漏れにくく室内側に電波が反射する。この反射するという性質をうまく使うことで、少しではあるが遠くまで電波を飛ばせるようになるわけだ。
つまり、室内に反射するので壁際に置くのはいいが、ガラス窓の横だと屋外側にダダ漏れになって室内側に反射しない。可能であれば金属製のつい立てのようなパネルを壁側に置けば、最も効率よく反射するようになるはずだ。
また、部屋の間で電波を通したいなら、電波が通り抜けやすいようにドアは開けておき、仕切りは薄いカーテンにしておくとか、Wi-Fiを最優先するならリフォーム時になるべく壁を少なくするというのが有効だ[*2]。
[*2]……部屋間を有線LANで繋いでおき、各部屋にWi-Fiアクセスポイントを置くとさらに効率的だ。部屋間を繋ぐ構築手法は、おいおい触れていきたい。
今回の教訓(ポイント)
Wi-Fi電波をうまく飛ばすには、金属や壁に反射してガラスは透過する性質を利用する
Wi-Fiルーターの周囲は障害物をなくして、使う側に反射させるように工夫するとベスト
「自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!」連載記事一覧
- 第1回:「ギガ」を減らしたくなきゃ、自宅Wi-Fiルーターを使え!
- 第2回:「Wi-Fiルーター」ってそもそもナニ?
- 第3回:Wi-Fi速度アップのキモ、複数アンテナを駆使する「MIMO」とは?
- 第4回:スマホのWi-Fi性能をチェックするには?
- 第5回:スマホ通信の高速化のためには自宅の回線も「ギガ」に
- 第6回:Wi-Fiとルーターは別のもの?
- 第7回:失敗しないWi-Fiルーターの製品選び(1) 国内メーカーと海外メーカー
- 第8回:失敗しないWi-Fiルーターの製品選び(2) iPhoneユーザーにはApple製品がオススメなの?
- 第9回:失敗しないWi-Fiルーターの製品選び(3) 高性能Wi-Fiルーターの選択もアリなのか考える
- 第10回:Wi-Fiルーター開梱の儀
- 第11回:Wi-Fiルーターをネット回線に接続するときの注意点は?
- 第12回:とりあえずの初期状態でWi-Fiに繋がってみよう。そのまま使い続けは厳禁
- 第13回:Wi-Fiルーターでインターネット接続設定をするコツ
- 第14回:ボタンプッシュを使ったWi-Fi接続設定を使ってみる
- 第15回:Wi-Fiの「SSID」について少し知っておきたい心がけ
- 第16回:Wi-Fiの暗号化方式・暗号化キーについて少し勉強しておきたいこと
- 第17回:Wi-Fiルーターの「IPアドレス」を忘れたら?
- 第18回:Wi-Fiの「SSID」ネーミングの注意点、周囲に発信しているものだということを意識しよう
- 第19回:長くランダムなWi-Fi暗号化キーを設定するコツ
- 第20回:Wi-Fiルーターが壊れたときに役立つ「設定ファイル」の保存方法
- 第21回:“ギガ”を無駄に減らさない自宅Wi-Fiを活用する設定とは
- 第22回:新たに設定したWi-Fiルーターにうまく繋がらないときの対処法
- 第23回:家族のスマホWi-Fi接続を簡単に済ませるとっておきテク
- 第24回:新しめのiPhoneやiPad、Mac同士なら「Wi-Fiパスワード共有」が簡単
- 第25回:タッチだけでWi-Fi接続させるNFCタグをAndroidスマホで作ってみた
- 第26回:2018年夏の良コスパWi-Fi
- 第27回:Wi-Fiルーター迷ったらコレを選べ! 実売価格1万円前後、2018年夏の“良コスパ”お勧め製品
- 第28回:Wi-Fiルーター迷ったらコレを選べ! 実売価格7000円以下のお勧め製品
- 第29回:Wi-Fiルーター接続後に必ずやっておきたいこと
- 第30回:ファームウェアのアップデートをZIPファイルから行うには
- 第31回:Wi-Fiルーターの時刻を自動で合わせる
- 第32回:スマホの時刻を自動で合わせるには
- 第33回:パソコンの時刻を自動で合わせるには
- 第34回:もしかして、Wi-Fiが二重ルーター状態になってない?
- 第35回:Wi-Fiが二重ルーター状態になっているかを確認するツールは?
- 第36回:Wi-Fiが二重ルーターになっているか、実際の確認方法は?
- 第37回:二重になったWi-Fiルーターをオフにするには?
- 第38回:自宅のLANでIPアドレスを固定すると便利な機器は?
- 第39回:自宅のLANでIPアドレスを固定するマイルールを決めてみる
- 第40回:ルーターでIPアドレス配布するルールを設定する
- 第41回:Wi-FiアクセスポイントでIPアドレスを固定して使うには?
- 第42回:ネット回線が繋がらない! その時の対処法(1):軽微なトラブルは再起動
- 第43回:ネット回線が繋がらない! その時の対処法(2):回線接続トラブルならサポートを
- 第44回:ネット回線が繋がらない! その時の対処法(3) 光回線の接続は確実に
- 第45回:家庭へのWi-Fiルーターの導入まとめ(1)
- 第46回:家庭へのWi-Fiルーターの導入まとめ(2)
- 第47回:家庭へのWi-Fiルーターの導入まとめ(3)
- 第48回:家庭へのWi-Fiルーターの導入まとめ (4)