自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第3回

Wi-Fiルーターのアンテナで電波の飛びを改善しよう

 前回から、スマホで使う際に、Wi-Fiの電波の飛びを少しでも改善していこうという解説をしている。今回は、Wi-Fiルーターによる電波の送受信で重要な役割を持つアンテナについて、少し理解を深めてみよう。

「Wi-Fi電波の飛びにはアンテナがすごく重要なんです!」と申しているようであります

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 電波を利用する機器には、必ずアンテナが付いている。アンテナが露出しているWi-Fiルーターは実に分かりやすいが、露出していなくても、内部にはアンテナが内蔵されている。これはスマホやPCでも同じで、必ずアンテナが内蔵されている。

 アンテナは、周囲に障害物がない方が、断然効率よく動作する。前回の電波の特性でも解説したが、プラスチックや木材程度であれば電波は透過する。ただ、障害物は何もない方が、電波の通りがいいに決まっている。

 Wi-Fiルーターのアンテナが本体の外に露出しているモデルを選び[*1]、スマホはケースには入れずに使うようにするのが、電波のことを考えればベストと言える。たまに、アルミなどの金属でできたスマホケースを見かけるが、これは電波を遮断してしまうので、電波の送受信の面からは、大変よろしくない。

[*1]……実際のところ、外部アンテナの金属部分は、むき出しではなくプラスチックケースに入っているので、内蔵のモデルと似たり寄ったりとは言える。だが、本体の外に露出しているモデルは、アンテナ自体が大きめで、向きを変えられることのメリットも大きい

 Wi-Fiで使われるアンテナは、ほとんどが「単一型」と呼ばれるタイプが使われている。金属線1本で作られたホイップタイプのロッドアンテナを垂直に立てて使うのが基本だ。アンテナが露出しているならロッドを垂直に立てた状態、内蔵なら本体を立てた状態がこれにあたる[*2]。そして、この状態に設置すると、「無指向性」といって、アンテナの水平方向側に対してどちらの方向にも電波が飛んでいく。

[*2]……アンテナ内蔵モデルは、本体を立てても横に寝かせてもいい、向きを変えられるようになっている場合があるが、どちら向きにしても同じ利得の360°無指向性となっていることが多い。取扱説明書をよく読んで把握しておこう

 垂直方向は、8の字型というかドーナッツ型というか、アンテナロッドに対して直角の方向に電波が最も強く飛んでいくという、若干の指向性がある[*3]。何となくそちらに向けたくなるのだが、ロッドが指している方向(垂直状態で上)には、あまり電波が飛んでいない点には注意したい。

[*3]……スマホのアンテナは、本体の上部付近に内蔵されていることが多いが、縦と横どちらの方向にアンテナが向いているかは、製品によって違うため、分かりにくい。ノートPCは、液晶の周囲に沿ってアンテナがある

単一型というホイップアンテナの指向性。中心にアンテナがあり、左が上からで右が横から見ている

 つまり、アンテナロッドを垂直に立てると横(水平)方向に、水平に倒すと縦(垂直)方向に、電波が強く飛ぶようになる。よく使う場所の方にアンテナを向けるのがコツだ。例えば、広い部屋なら垂直に立てて、高さのある3階建て家屋のような場所では水平にして使うといいだろう。

アンテナの傾きによって電波が強く送受信される向きが変わる。左の状態だと垂直方向に、右の状態にすると水平方向に強くなる

 最近のWi-Fiルーターでは、MIMOの機能によって複数のアンテナロッドが立っている。これらはダイバーシティ動作しているので、使う位置を限定していない場合には、垂直と水平を混在させてさまざまな向きにしておくと、電波の反射も含め上下関係なく広いスペースで切れ目なく利用できる。

このようにランダムな向きにしておくと、位置を定めずに利用する場合に向く

 Wi-Fiルーターと利用場所の位置関係がある程度決まっている場合は、例えば、1つの部屋のみで水平方向の移動しかないケースなら、いつもスマホを使う位置と同じ高さにし、アンテナロッドをすべて垂直にして設置しておくと、電波の強さが最も強くなる。この状態では、ビームフォーミングの効果も出やすくなるのでオススメだ。

 一方、机に座ってスマホやノートPC作業が多いなら、同じくらいの高さの棚上で上部を棚板などで覆わないようにWi-Fiルーターを設置するのが、最も電波状態がいい[*4]。この利用方法では、何となく傾けるとアンニュイでカッコイイから、などと、ヘンにアンテナを傾けないようにしたい。

[*4]……Wi-Fiルーターは、玄関などに設置した回線接続機器のそばに置かれることが多いのだが、電波のことを考えると、スマホなどを使う部屋に持ってくるのが最善。この解決策は、これからおいおい紹介していく

 また、複数のアンテナがよく見える位置関係にWi-Fiルーターを設置するのもコツだ。壁際ならアンテナが横に並ぶような配置がオススメ。使う側から見て列になる状態だと、MIMOの効果が薄れてしまう。

アンテナを垂直にしたWi-Fiルーターと同じ高さで使うと、電波の状態はいい

 最後にちょっと注意点。アンテナは、利用する周波数の波長に同調するよう作られている。1波長は5GHz帯は6cm、2.4GHzが12.5cm。単純に1波長のアンテナは、この双方の長さに合わせて厳密に作られている。計算されていない無意味に長いアンテナを付けても、利得は上がらないので注意したい。

 また、法人向けには外部アンテナが交換できるモデルもあり、より指向性を高めて特定の位置で使いたい場合に活用できる。ただし、アンテナは、勝手に何でも交換してOKというわけではなく、メーカー側が適用可能とするモデル同士だけにしよう。これを考慮せずに交換してしまうのは、電波法に違反した状態になってしまう[*5]。そもそも外部アンテナは、接続ケーブルでの減衰がとても大きいため、あまりオススメではない。

[*5]……Wi-Fi機器は、基本的に販売されている状態のままのときに、免許がなくとも電波を出すことが許可されている。このため改造は違法となる。このことに関しては、この後、出力の解説を行う時に詳しく解説しよう。

今回の教訓(ポイント)

Wi-Fiの電波は、アンテナの向きを変えると飛ぶ方向が少し変わる
水平重視なら垂直に、垂直重視なら水平の向きに動かすといい

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。