自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第14回

Wi-Fiの電波の強さを正確に把握しよう(4)

【Wi-Fiルーターの位置をヒートマップから調整】

 使いこなし編は、まずWi-Fiの電波状況を良くすることにフォーカスしている。Wi-Fi通信状況を改善するため、自宅内の電波状況を把握する作業を行っているが、前回はスマホを使って自宅の間取り図を元に、Wi-Fiの電波強度分布を可視化するWi-Fiヒートマップを作成してみた。これで、自宅Wi-Fiのウィークポイントが明確にできたことになる。

前回作ったWi-Fiヒートマップを元に、Wi-Fiルーターの位置を最適化してみよう

「自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ! 使いこなし編」連載記事一覧

作成したヒートマップからWi-Fiの電波が弱いエリアを把握

 作成したヒートマップに黄色や赤の部分があれば、その部分の電波が弱いということになる。黄色程度であれば、実際の運用時には特に問題はない。ただし、赤の部分では、通信が途切れるといったトラブルが起こりやすくなる。

前回作成したヒートマップの平面図。寝室周辺の電波が少し弱めだが、実用上は問題ない
前回作成したヒートマップの立面図。1階の端の電波が弱いことがわかる

 赤い場所でWi-Fiを利用する頻度が高いのであれば、以下のような選択肢から、何らかの対策を打っていきたいところだ。

  • A)Wi-Fiルーターの位置を調整する
  • B)Wi-Fi中継機を追加して補完する
  • C)Wi-FiルーターをメッシュWi-Fi対応タイプに変更し、複数台設置する
  • D)Wi-Fiアクセスポイントを同一LAN内に複数台設置する
  • E)Wi-Fiルーターをハイパワータイプに変更する

 電波の弱いエリアの広さがどの程度かによって、対策を変えていこう。今回のようにほんの少し弱いだけなら、A)が有効だ。B)は弱いエリアがもう少し多く、さらに家が広くて電波を補完し切れなそうな場合に有効だ。弱いエリアがさらに広いようなら、C)の選択肢となるが、根本的にはルーターを買い換える必要が出てきてしまう。

 D)は、複数の部屋間にLANケーブルが敷設済みという条件に合うなら構築ができる。E)もWi-Fiルーターを買い換えることになるが、ハイパワーと言っても最高出力は決まっているので、エリアが大きく広がることを想像しているとガッカリすることになる。過度の期待は禁物だ。

まずWi-Fiルーターの設置位置を変えてみよう

 まず、A)のWi-Fiルーターの位置調整を実践してみよう。インターネット回線は部屋の隅に配線されることが多いため、たいていのWi-Fiルーターは部屋の角に置かれたケースが多いだろう。ただ、電波は1方向だけに出るわけではないため、中間地点にあった方が効率がいい。Wi-Fiルーターは、なるべく生活エリアの中央に持ってくるようにしてみよう。

 とはいえ、家の中心に置くのはなかなか難しい。角ではなく壁際でもいいので、部屋や家の中心へ近い場所に設置してみよう。外部アンテナの向きの調整に関しては、連載の第3回を参照して欲しい。

 長めのLANケーブルを壁際を這わせるようにすれば、2~3m程度なら簡単にWi-Fiルーターの位置を移動できるはずだ。ACアダプターの配線には長さに限りがあるので、コンセント近くに配置するのがコツだ。

 LANケーブルには専用のカバーがあり、「配線カバー」や「ケーブルモール」といった名前で販売されている。家電用品店やホームセンターで手に入るが、最も手軽に入手できるのは、100円ショップのダイソーの「配線カバー」という製品だろう。「L(16mm)」と「M(11mm)」で、長さは1m。色も数種類用意されているので、これもうまく活用しよう。

ダイソーに売っている「配線カバー」。これは「L」サイズで、もちろん100円(税別)
パカっと外して、配線を入れる。一般的な太さのLANケーブルが入る
Lサイズは、ACアダプタのケーブルも一緒に入る。裏には両面テープが付いていて、壁の巾木などに接着できる
Wi-Fiルーターを家の中央あたりの通路の中間に移動してみる

 どんな家でも、必ずしもスッポリとエリアに入るとは限らないが、この程度の木造2階建てまでなら、設置場所やアンテナの向きを工夫するだけで、Wi-Fi電波のエリア内に収めることができるはずだ。

 位置変更後にヒートマップを再作成してみると、Wi-Fiルーターの位置を家の中央寄りにすることで、ほとんどをグリーンの良好なエリア内に収められた。前回も注意したが、これでも5GHz帯の電波出力を25%まで弱め、ビームフォーミングをオフにした状態だ。

Wi-Fiルーターの位置を変更した後の平面ヒートマップ。ほとんどグリーンになった
Wi-Fiルーターの位置を変更した後の立面ヒートマップ。実用上問題ない

 部屋間に壁がほとんどない点は割り引く必要はあるが、電波出力の強さにこだわるより、出力を最小限に調整しつつ設置位置を見直す方が、周囲に迷惑を掛けないし、セキュリティの面からも安心できる状態で、快適度も保たれる。やみくもにハイパワーやメッシュWi-Fiへ投資をせず、まず最初にWi-Fiルーターを設置する位置の変更を検討して欲しい。

今回の教訓(ポイント)

Wi-Fiルーターの設置位置を、なるべく利用エリアの中央に持ってくる
配線カバーでケーブルを配線すると見栄えよく移動できる

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。