自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第5回

電波の出力は強けりゃイイってもんじゃない。

 ここまでの自宅Wi-Fi使いこなし編では、スマホで使うWi-Fiの電波の飛びを少しでも改善していく方法を解説している。電波の飛びは電波出力の強弱で変わるが、Wi-Fiは単純に遠くに飛ばすだけが使いこなしではない。今回は、電波の出力を下げるメリットについてお教えしよう。

Wi-Fiルーターの電波は強けりゃイイってもんじゃないのだ!

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 Wi-Fiの話題では、やたら電波の入りを良くすることばかり書かれることが多いのだが、自宅Wi-Fiでは、家族が利用する場所でWi-Fiの電波が飛んでいればよく、逆にそれ以外の場所には、飛んでいかないほうが本来はいい。

 しつこく言うがWi-Fiは電波だ。つまり、電波を受信さえできれば、どのようなデータが飛んでいるかはわかってしまう。

 ただ、通常Wi-Fiは暗号化して使っているので、暗号化キーがなければ内容は分からない状態になっている。また、ウェブブラウザーでHTTPSのセキュアな通信をしていれば、その内容も暗号化されている。

 このような状態で実際に通信の内容を知るのは難しいし、一般家庭に対してそこまでやるか? ということもある。それでも、万が一にも暗号化キーを入手されてしまえば、単に自宅のWi-Fiにつながれてネット回線を使われてしまうだけでなく、同時に接続している端末による通信内容が意外と簡単に見られてしまう(こうして他人の通信内容を盗み見るのは、もちろん犯罪だ)。

 Wi-Fiの暗号化方式としては現在主流の「WPA2」も、いまだ悪用された攻撃は確認されていないものの、脆弱性自体はすでに存在している。100%完璧な暗号化というモノはなく、解析手法とはイタチごっこ[*1]というのは、いつの時代になってもあまり変わらなかったりする。

[*1]……別の見方をすれば、こういう切磋琢磨する状態でないと、よりよいテクノロジーは生まれていかない。暗号化方式は、ある程度時間が経ったら適宜見直していくことが肝心だ

 ここで少し考えてみれば、電波さえ届かなければ何もできないことに気がつくハズだ。電波の圏内を利用する範囲にとどめておくことは、セキュリティを高める最も有効な手段になるワケだ。PCであれば、セキュリティを考慮してWi-Fiを使わず、有線LANのみにするという選択もあったが、スマホでWi-Fiを使わないという選択はあり得ないだろう。

 理想的なのは、自宅で使う場所のピンポイントのみでWi-Fiを使えるように設定することだ。使う部屋の中だけ電波が飛んでいて、屋外には電波が飛ばないように工夫する。最善なのは、後ほど実践してみるメッシュWi-Fiを活用して、電波のエリアをコントロールする方法だ。

 ほかにも、各部屋間に有線LANを敷設しておき、出力を絞った複数のWi-Fiアクセスポイントを渡り歩くようにする方法もある。部屋内のみ電波が届く程度の出力にしておき、使う部屋の分だけ複数設置するワケだ[*2]

[*2]……筆者宅では、基本的にこの使い方をしている。全ての部屋に有線LAN端子があり、Wi-Fiアクセスポイントを設置している。一度接続してしまえば、電波が強い方のアクセスポイントへ自動的に接続されるので、環境さえ作ってしまえば煩わしいことは特にない

 電波の出力は、設定画面から変更できるWi-Fiルーターが多いが、残念ながら全ての製品で可能なワケではない。一人暮らし向けの製品やモバイルWi-Fiルーターでは、電波出力を下げる機能は意外と見落とされがちなので、機能の有無を確認して購入するといい。

 自分が接続するエリア内で最初にガッツリ電波を絞って、不便だったら電波の出力を上げていくという方法が、不便が生じない程度に最適な電波出力を探りやすい。

バッファロー製品の場合、[詳細設定]の[無線設定]で設定する周波数帯を選ぶ
[拡張設定]の[送信出力]で、出力を下げることができる

 もう1つ、無線のセキュリティが気になるなら、Wi-Fiルーターを付けっぱなしにしない、という使い方も考えられる。家族が寝ている深夜にはタイマー機能を使ってオフにしたり、自分しか使わない環境なら、旅行などで出かける時には電源を切っておくのもいいだろう。

 一度、自宅のWi-Fiからどのくらいの距離まで電波が飛んでいるのか、自宅周辺でスマホを持って一周してみて確認してみて、一軒家なら自宅前の道路周辺、マンションであれば共用通路などでも、ガンガンに入ってしまうようであれば、ちょっと無駄に飛びすぎだろう。

今回の教訓(ポイント)

自宅Wi-Fiの電波は利用するエリアで電波が入れば十分。それ以外に漏れるのはセキュリティリスク
Wi-Fiルーターの設定で電波出力を弱めることが可能

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。