自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第10回

Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(5)

【モバイルWi-Fiルーターでの注意点】

 使いこなし編は、まずWi-Fiの電波状況を良くすることにフォーカスして、Wi-Fi通信状況を改善するため、チャンネルの設定を見直している。

 今回はちょっと脇道にそれるが、家庭向けのWi-Fiルーターではなく、モバイルWi-Fiルーターを使う時の注意点に触れておこう。

今回は家庭向けの話から少し離れて、屋外で使うことの多いモバイルWi-Fiルーターを活用する上での注意点を見ていく

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 モバイルWi-Fiルーターを屋外で使うときに、5GHz帯を使いたい場合は注意が必要だ。

 なぜなら、屋外で使用できる5GHz帯は「W56」のみなのだ。2018年からは、条件付きで「W52」が使えるようになったが、その条件について「無線LANの屋外利用について」という総務省のウェブページには「アクセスポイント及び中継器については、事前に総合通信局に『登録局』の手続が必要。」とある。モバイルWi-Fiルーターを登録局として申請して使っているケースはまずないので、基本的に「W56」のみしか使えない、と考えておけばいいだろう。

 “モバイル”と言っても、車内やカフェなどの屋内で使うときには、気にせず「W52」と「W53」を利用できる。ただ、チャンネルを頻繁に切り替えて使うのは面倒だし、あまり現実的ではないかもしれない。

 ちなみにモバイルWi-Fiルーターには、家庭内で使うWi-Fiルーターと異なり、2.4GHz帯と5GHz帯を同時に使えるものはまずなくて、どちらかに切り替えて使うものがほとんどだ。5GHz帯は2.4GHz帯の補助的な扱いで、「W52」のみ[*1]だったり「W56」のみ[*2]だったりと、製品によって限定的に搭載される位置付けだったりする。

[*1]……海外メーカーの安いモデルには、このパターンが多い。DFSで接続が切れることはないが、屋外では利用できない

[*2]……NECプラットフォームズの「Aterm MP01LN」はIEEE 802.11ac対応だが、5GHz帯は「W56」のみに限定されている。コンパクトなので外で使うことを重視しているのだろう。この場合、W52のみのAmazon製品などでは5GHz帯を使えない

 また、前回も書いたが、「W53」と「W56」には「DFS」という機能の搭載が必須だ。レーダーなどの電波を感知すると別のチャンネルへと移動するもので、その間は急に1分ほど接続できなくなる。しかも、モバイルWi-Fiルーターの電源は頻繁にオンオフするだろうが、電源オン時には必ずDFSのサーチ待ちが入る。短時間とはいえ接続が寸断するのは、さすがにちょっとばかりイラっとする。ちなみに「W52」ならば、DFSによる`電波の途切れはない[*3]

[*3]……W52を屋外で使っていて検挙された例を聞いたことはないが、こちらのウェブページによれば、総務省では電波を監視して場所を特定する「DEURAS」というシステムを運用して、宇宙(衛星)の電波も監視している。W52は主に衛星通信のGlobalstarとの共用になっている

NECプラットフォームズのモバイルWi-Fiルーター「Aterm MP01LN」。超コンパクトで手軽に使える。価格もお手頃だ

 では、NECプラットフォームズのモバイルWi-Fiルーター「Aterm MP01LN」で5GHz帯を使えるようにする手順を見ていこう。

ウェブブラウザーを使った設定画面の[無線LAN]の項目で、[5GHz(W56)]にチェックを入れる
設定を適用しようとすると、DFSの動作に関する警告が表示される。W56が使えないときは2.4GHz帯に切り替わる
モバイルWi-Fiルーターの電源をオンにすると、5GHz帯を使うかどうかの選択画面が表示される
「YES」を選ぶと、情報表示画面で1分ほどWi-Fiアイコンが点滅し、DFSのサーチ待ちになる
サーチが終わると、晴れて5GHz帯が使えるようになる

 このようにモバイルWi-FiルーターでW56(またはW53)を使うには、かなり煩雑な手順が必要な上、電源をオンにするたびにサーチで待たされてしまう。こういった悪条件を考えると、モバイルWi-Fiルーターに関しては、2.4GHz帯を使うことをオススメしたい。

 さらに言えば、PCやタブレットで至近距離からの利用が主体なので、バンドが混んでいたとしても影響を受けないことも多い。

 ただ、大きなホテルなどのイベント会場や宴会場では、2.4GHz帯が全く使い物にならないことがある。2.4GHz帯が激混みでどうしても通信できない場合にのみ、5GHz帯に切り替えて逃げる、という使い方をするといいだろう。ただ、こうした場合、たいてい5GHz帯も混んでいるはずだ[*4]

[*4]……混み過ぎでどうしてもWi-Fiが繋がらない場合、PCであればUSBポートに接続してモデムとして使えるモバイルWi-Fiルーターが多い

 一方、家庭用Wi-Fiルーターを屋外で使うことは少ないかも知れないが、例えば離れと母屋をWi-Fiで繋ぎたいとか、オープンテラスや庭でもWi-Fiを使いたいというケースで、5GHz帯を活用したいときは、必ずチャンネルを「W56」に限定するように設定して欲しい。

バッファロー製Wi-Fiルーターには、5GHz帯を[屋外で使用する]という設定ができる。その上でメニューを[自動]に設定すると、屋外で使用できるチャンネルが自動で選択されるようになる

今回の教訓(ポイント)

モバイルルーターでは無理して5GHz帯を使わなくてもよい
屋外で利用できる5GHz帯は現状ではW56のみ

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。