自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第4回

Wi-Fiルーターとスマホで電波の反射効果を実験してみる

 ここまでの自宅Wi-Fi使いこなし編では、スマホで使うWi-Fiの電波の飛びを少しでも改善していく方法を解説している。前回はWi-Fiルーターのアンテナの使い方についての工夫をお伝えした。今回は、金属の反射を使った実験をしてみよう。

今回もWi-Fiルーターの電波のお話です。電波の反射を使った効果はどんなモンでしょうか?

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 ここまでは、“電波は金属には反射する”と解説した。アンテナを改造すれば法に触れてしまうが、この反射をうまく使うコントロール手法には、特にこうした問題はない。

 良くあるのが、窓際にWi-Fiルーターを置いた場合に、金属製のブラインドを閉めて室内側への電波を強くしようとするパターンだ。もちろん、積極的に金属製の反射板を作って置いてもいいし、壁に直接金属板を貼り付ければ、だいぶスマートになる。金属製のパーティションなどを活用してもいいだろう。こうした手法で、どの程度に効果があるのか、ちょっと実際に試してみた。

テスト環境は、こんな感じの窓際。外に向けては全面が窓となっている

 窓際に置いたWi-Fiルーターから5mほど離れた位置の電波強度が、間にあるアルミ製ブラインドを開け閉めするとどの程度変わるのかを計測してみた。計測には、シンプルに最大を100として電波強度を数値で表示してくれるアイ・オー・データ機器のスマートフォンアプリ「Wi-Fiミレル」を用いている。

窓についたアルミ製のブラインドをキッチリと閉めてみる

 結論から言うと、大騒ぎするほど金属反射の効果はなかった。わずかに電波強度が良くはなるが、誤差の範囲とも言える。あまり苦労して環境を作る意味はないが、壁際であれば、金属板を置くのはさほほど難しくはないはずなので、やってみる価値はあるかも、という程度だ。

5GHz帯で、ブラインドを開けた状態(左)と閉じた状態(右)
2.4GHz帯で、ブラインドを開けた状態(左)と閉じた状態(右)

 それより気になるのは、同じ位置で計測すると、5GHz帯より2.4GHz帯の方が電波強度が強いことだ。この傾向は、Wi-Fiルーターとの距離が遠いと、より顕著だった。反射の効果についても、2.4GHz帯の方が少しだけだが分かりやすい。

 自宅周辺の環境や、ほかの家電からの干渉などを考慮すると、2.4GHz帯が空いているということはまずないので、常時利用をお勧めするのは難しいところ。だが、速度より距離と安定度を優先したい場合に限っては、2.4GHz帯を積極的に活用するといい。

 スマホでは、IEEE 802.11acの速度の恩恵はそれほど受けられないので、Wi-Fiの接続が不安定な場合には、2.4GHz帯を用いてIEEE 802.11nでの接続をして安定させるのも1つの手法だ。ちなみに、2.4GHz帯は電子レンジの干渉を受けるので、キッチンでの利用には注意したい。さらに、Wi-FiルーターとWi-Fi子機の中間地点で電子レンジを使うと、通信が中断してしまうこともよくある。

 Wi-Fiミレルのような電波強度を計測するアプリを使うと分かりやすいのだが、Wi-Fiの電波は、ルーターとの距離と障害物の影響をもの凄く受けることが理解できるはずだ。例えば、スマホとWi-Fiルーターの間を人が通って電波が遮られると、その瞬間ガクッと電波強度が落ちたりする。

 今回の実験結果を考えると、金属反射は考えないよりはマシ。そこそこ活用しつつ、部屋内で快適に使えるポイントを探ったり、Wi-Fiルーターの周囲の障害物をなくすことに注力するとイイんじゃないかと思える。

今回の教訓(ポイント)

Wi-Fiの金属反射効果は限定的なので、過度な期待は禁物
2.4GHz帯は5GHz帯より遠くまで届く

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。