自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第25回

テレワークのネット回線、急いで用意する方法は?

 使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で急きょ自宅でインターネット回線を用意しなくてはならない人に向け、特別編としてモバイル回線を活用してインターネット接続環境を構築する方法を解説している。回線工事を待つことなく、とにかく急いで導入したいときに、モバイル回線がとても重宝する。

今回は、モバイル回線を共有して利用できるWi-Fiルーターを見ていこう

 前回は、スマホの回線を使ったテザリングを活用してPCをインターネットに接続する方法を確認してみた。スマホのテザリングを使い始めれば分かるかと思うが、この手法はあくまでも急場をしのぐものだ。

 一人で1台だけのPCをインターネットに繋げるにはお手軽なのだが、家族みんなが常時繋げたりする用途には向かない。通信が一定時間途絶えると機能を停止したり、接続台数がおよそ10台以下に限られていたり[*1]、そもそもの回線契約が大容量向けでなかったりと、常時利用するには注意点も多い。

[*1]……10台も繋げれば十分と思うかもしれないが、家族で実際に使い出すと、タブレットやゲーム機、TV向けのプレーヤーなど、Wi-Fiに繋げたい機器は意外と多い

 そこで使われるのが、モバイル回線向けのWi-Fiルーターだ。「ポケットWi-Fi」などとも呼ばれる小型の製品で、見かけたことのある方もいるだろう。これを持ち歩いて、モバイル回線が使えない機器を外出先でネット接続する目的で使われている。

 これを自宅で使ってみようというのは、誰でも考え付きそうな手法だが、実はこれの「持ち歩けない」バージョンも存在する。これは、自宅でガッツリとモバイル回線を使う目的のWi-Fiルーターとなる。テレワークなどのある程度シッカリした自宅回線を確保するなら、こちらの「ポケットに入らない」タイプのWi-Fiルーターをお勧めしてしたい。

モバイル回線向けのWi-Fiルーターには、用途の違いから持ち歩き用と据え置き用の2種類がある。据え置きモデルは、UQ WiMAX「Speed Wi-Fi HOME L02」

 持ち歩き用と据え置き用の大きな違いは、バッテリーが搭載されているかどうかと、本体のサイズだ。どうせなら小さくて持ち歩けた方がイイと考える向きもあると思う。もし一人暮らしならそちらが正解だ。自宅から出るときは、いっしょに持ち出してフル活用できる。

 ただし、家庭向けで複数人が使う目的なら、据え置きタイプのモバイル回線向けWi-Fiルーターを家に固定してしまった方が快適になるケースが多い。据え置きタイプの方がサイズに余裕があるので、アンテナなどの面からも、広い部屋でWi-Fiの速度が安定して出やすい。電源を繋げたままの連続稼働も考えられた設計になっているので、接続できる機器の数も20台程度と余裕があり、動作が不安定になりにくい点もメリットとなる。

 さらに以下の項目もチェックして選んでもらいたい。5GHz帯で屋外使用が限定される関係で、屋内限定で利用するWi-Fiルーターの方が使いやすいケースが多いからだ。

  • 2.4GHz帯と5GHz帯を“同時に”(切り替えずに)利用できるか
  • 5GHz帯でIEEE 802.11acが使えるか
  • 有線LANポートが用意されているか

 モバイル回線を使う持ち歩き用のWi-Fiルーターでは、気象レーダーの関係で、屋外で利用できない帯域[*2]を含む5GHz帯が省かれていたり、2.4GHz帯と切り替えて利用する必要があったりするモデルが多い。これは、広いエリアにWi-Fiを届かせたい屋内で、少し使いにくくなることを意味する。

コンパクトな持ち歩き用のモバイルWi-FiルーターであるNECプラットフォームズの「Aterm MP01LN」。電源を入れると5GHz帯を利用するか確認する画面が表示される

[*2]……ちなみに屋外で使用できる5GHz帯は「W56」のみだ。5GHz帯の屋外利用について、詳しくは本連載で過去に掲載した「Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(5)【モバイルWi-Fiルーターでの注意点】」を参考にして欲しい

 その点、利用が屋内に限られる据え置き型では、5GHz帯のIEEE 802.11acがストレスなく利用でき、これだけでもメリットは大きい。スペック表や本体背面などをチェックして「IEEE 802.11ac」と書かれていること、「W52」「W53」「W56」と3つが利用できる記載があることを確認して選ぶといい。固定回線につないで使う一般的なWi-Fiルーター同様に、5GHz帯をフル活用できる。

Speed Wi-Fi HOME L02の底面には、IEEE 802.11acと、W52、W53、W56の表記がある

 また、持ち歩き用のモデルでは、まず装備されない有線LANポート[*3]があることも、PCを使ったテレワークにはメリットになる。ビデオ会議では、安定した通信が常時求められるが、Wi-Fiの接続がどうしても安定しないときは、PCを有線LANポートに接続すれば、安定した通信が可能になる。欠かせない重要な会議に臨むなど、ここぞという際に活用して欲しい[*4]

[*3]……モバイルWi-Fiルーターでも、クレードルを使えば有線LANが利用できるモデルも存在する。モバイルと自宅を兼用して、という使い方を考えているなら、クレードルの有無をチェックして欲しい。例えばUQ WiMAXなら「Speed Wi-Fi NEXT WX06」にはオプションとして用意されている

[*4]……モバイルWi-Fiルーターには、PCのUSBポートに接続するとモデムとして動作するモデルもある。この場合、Wi-Fiを一切使用しないので、安定して通信ができる。ただし、この方法ではPC1台だけしか回線が使えない。LANポートに繋げば、ほかの機器がWi-Fiでネットに接続できる大きな違いがある

Speed Wi-Fi HOME L02には、ギガビット対応のLANポートが2つある

 今回、選んだ据え置きタイプのモバイル回線向けWi-Fiルーターは、UQ WiMAXの「Speed Wi-Fi HOME L02」だ。本体は、一般的なWi-Fiルーターと似たようなサイズ感で、4本のアンテナを内蔵。2.4GHz帯と5GHz帯それぞれ20台、計40台までの接続に対応する。

 ギガビット対応の有線LANも2ポート用意されていて、テレワークには申し分ない高スペックモデルだ。バッテリーは内蔵しないので、電源に接続する屋内専用の製品となる。

UQ WiMAX「Speed Wi-Fi HOME L02」

 使いたいモデルを絞り込んでいったら、最終的に回線契約が、使い放題もしくは制限はあるが納得できる程度の大容量通信可能な契約かを、しっかり確認しておこう。使い放題とはいえ、たいていは一定期日内の通信量に応じて、速度が制限されるようになっている。

 例えば、UQ WiMAXの「ギガ放題」では、WiMAX 2+回線が、通信量上限なしで使い放題[*5]なのだが、3日間で10GB以上利用すると、翌日18時ごろから翌々日2時ごろまで速度上限が1Mbpsの制限がかかる。

 例えばテレビ会議などは、サービスによって使用する容量は差があるものの、あまり頻繁に行えば速度制限がかかる可能性が高い。これを避けるには、例えば画質を720pから360pへ落としたり、映像が不要なら音声のみにするなど、多少注意しながら使う必要はある。

 1Mbpsに制限されてしまうと、低画質なら1対1のテレビ電話はできるが、グループ通話はキツくなる。動画視聴でいえば、あくまで目安とはなるが、YouTubeをHD画質で1時間見ると約1GB程度だ。また、1Mbpsに制限されても標準画質や中画質なら視聴できるだろう。

[*5]……auのLTE回線も追加オプションの月額料金1005円で7GBを利用可能だ。ただ、これは持ち運ぶタイプのモデルをWiMAX 2+エリア外で使うことを想定している。自宅がWiMAX 2+エリア内なのを確認して契約すれば必要ないだろう。心配ならエリア判定目的で15日間試用できる「TryWiMAX」というサービスを活用するといい

 次回からは、この据え置きタイプのモバイル回線向けWi-Fiルーターを実際に設定していこう。

今回の教訓(ポイント)

モバイル回線向けWi-Fiルーターには、持ち歩き用と据え置き用の2種類がある
自宅でテレワークに使うなら、据え置きタイプがオススメ

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。