自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第31回

モバイルWi-Fiルーターで「Rakuten UN-LIMIT」を使う(失敗編)

 使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で急きょ自宅でインターネット回線を用意しなくてはならない人に向け、特別編としてモバイル回線を使ってインターネット接続環境を構築する方法を解説している。回線工事を待つことなく、とにかく急いで導入したいときに、モバイル回線がとても重宝する。

 前回までで、据え置きタイプのWi-Fiルーターの使いこなしを紹介した。今回からは、持ち運びに便利なコンパクトタイプのWi-Fiルーターの使いこなしを見ていきたい。

 据え置きタイプとコンパクトタイプでどちらを選択すべきかは、第25回の「テレワークのネット回線、急いで用意する方法は?」で触れているので、参考にして欲しい。

 ただ、大きな違いを簡単に言えば、ここぞというときに安定して接続できる有線LANが使えるかどうか、コンパクトタイプでは屋外での使用が前提とされるために5GHz帯の活用で制限がかかることの2つだ。

 つまり、自宅において家族など複数人で安定した通信をしたいなら据え置きタイプ、一人暮らしでほかに使う人がいなければ、持ち歩いて常に使えるコンパクトタイプを選ぶといい。

据え置きタイプとコンパクトタイプのモバイルWi-Fiルーター

 コンパクトタイプのモバイルWi-Fiルーターなら回線契約と一緒に購入してもいいし、別々に用意してもいい。Wi-Fiルーターは、たいていSIMロックフリーでSIMロックがかかっていないため、好みのデータ回線を選び、使っていて足りなくなったら別のSIM契約を追加するという、ある意味で荒っぽい使い方もできる。

モバイルWi-Fiルーターには、契約した回線のSIMを装着する。初期SSIDと暗号化キーはここに書かれている

 そこで今回は、楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」回線を用意し、接続をテストしてみた。ご存じの方も多いかと思うが、首都圏や大阪、名古屋、京都など、楽天モバイル回線のエリア内であれば、実質無制限にデータ通信が使える(通信が極端に多いと制限されることもある)。エリア外ではau回線のローミングで月間5GBまで利用できる。しかも、契約から1年間は通信量が無料(先着300万人限定、1人1回線のみ)となる。

 そこで、手持ちのNECプラットフォームズ製のモバイルWi-Fiルーター「MP01LN」にRakuten UN-LIMITのSIMを挿して使ってみた。だが、結果から言うと、これは失敗だった。

 楽天モバイルでは、MP01LNをモデルチェンジした「MP02LN」を販売しているので、問題ないだろうと考えて気軽に繋げてみたのだが、MP01LNはLTEのバンド3(1.7GHz帯)に対応しておらず、接続自体はできるものの、auのローミング回線へつながってしまった。

 Rakuten UN-LIMITでモバイルWi-Fiルーターを活用するには、バンド3とauローミング回線のバンド18が使える機種を選ぶことが重要だ。新しくモバイルWi-Fiルーターを購入するなら、素直に楽天モバイルで販売されているMP02LNを選ぶのが無難だろう。

 バンド3が使えずにバンド18のみ使えるモバイルWi-Fiルーターは珍しいと思われるが、製品の選択には注意して欲しい。楽天モバイルの回線はauローミング回線(バンド18)に接続しているのは分かりにくいので、今回の失敗例を参考に、キチンと接続先をチェックしつつ使うといいだろう。

 モバイルWi-Fiルーターを使い始める時には、契約したSIMを装着し、「APN」という接続先を設定する作業が必要だ。この設定例をMP01LNで見てみよう。NECプラットフォームズのモバイルWi-Fiルーターなら設定方法は同じようなものだ。ほかの格安SIMではAPNの設定値が異なるものの、設定の手順自体は変わらない。

まずはモバイルWi-Fiルーターの初期SSIDと暗号化キーを使ってWi-Fiに接続
ウェブブラウザーで「aterm.me(192.168.179.1)」へアクセスすると、設定画面へのログイン用パスワードを設定できる
設定したパスワードでアクセスし直す
設定ウィザードが開始される。後でホーム画面からも開始できる
[APN]に「rakuten.jp」と入力。[ユーザー名][パスワード]は空欄のままでいい
[WAN側接続確認]をタップ
「正常に接続されています」と表示されればOK
ホーム画面の[情報]を表示させ、[接続状態]をチェック。「LTE(440 53)」と表示される

 [情報]で表示される[接続状態]の「440 53」という番号は、「PLMN」と呼ばれる事業者別のコードで、「440」の部分は「MCC(Mobile Country Code/国番号)」、「53」の部分は「MNC(Mobile Network Code/ネットワーク番号)」という番号で呼ばれることもある。

 この「440 53」は、au(KDDI)に割り当てられている番号となる。つまり、auのローミング回線に接続していることを意味している。もし「440 11」と表示されていれば、楽天モバイル回線への接続を表していて、その際の通信は容量無制限の対象になるので、この番号を確認しながら使うといいだろう。なお、モバイルWi-Fiルーターによっては、「バンド3」や「B3」などと表示されることもある。

 もし、自宅が楽天モバイル回線のエリア内だと分かっていて、外出先でなく自宅のみ(つまりはエリア内のみ)で使うなら、とにかくバンド3にさえ対応していればいい。持ち出してauローミング回線を使う可能性があるなら、併せてバンド18にも対応していることを確認して導入しよう。ちなみに、NTTドコモ回線のMVNOでは、「LTE(DOCOMO)」と表示される。

 MP01LNは、LTEのバンド3に対応していないので、楽天モバイル回線エリア内でも、残念ながら楽天モバイル回線の「440 11」には接続できない。auのローミング回線では使えているものの、微妙に失敗と言える結果なので、次回はもう少しリベンジをしてみたい。

今回の教訓(ポイント)

楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」は、エリア内であればほぼ無制限でデータ通信できる
Wi-Fiルーターで「Rakuten UN-LIMIT」使うには「バンド3」に対応していることがポイント

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。