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【使いこなし編】第32回

モバイルWi-Fiルーターで「Rakuten UN-LIMIT」を使う(+F FS030W接続編)

 使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で急きょ自宅でインターネット回線を用意しなくてはならない人に向け、特別編としてモバイル回線を使ってインターネット接続環境を構築する方法を解説している。回線工事を待つことなく、とにかく急いで導入したいときに、モバイル回線がとても重宝する。

今回はコンパクトタイプのWi-Fiルーターをもう1台用意してみた

 これまで、据え置きタイプのモバイルWi-Fiルーターの使いこなしに続き、持ち運びに便利なコンパクトタイプのWi-Fiルーターの使いこなしを実践してきた。

 前回は、手持ちのNECプラットフォームズ「MP01LN」に、楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」回線のSIMを装着して使ってみたのだが、残念ながらパートナーであるauのローミング回線にしか繋がらず、エリア内であってもRakuten UN-LIMIT回線には接続できなかった。

 これは、MP01LNの対応周波数の制約によるもので、改良版となる「MP02LN」であれば問題なく利用できる。もちろん、MP01LNはNTTドコモ系MVNOの格安SIMで使う分には、こうした問題は起こらない。このシリーズのモバイルWi-Fiルーターは安価かつ超コンパクトなので、出先で気軽に使うには、とても重宝するはずだ。

 さて今回は、Rakuten UN-LIMIT回線に接続する目的で、富士ソフト「+F FS030W」というコンパクトタイプのモバイルWi-Fiルーターを用意してみた。価格がリーズナブルな上、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアに対応していて、LTEの対応周波数を調べるとバンド3とバンド18に対応している。なので、Rakuten UN-LIMIT回線でも問題なく利用できるはずだ。MVNO格安SIMと組み合わせて販売されていることが多いようだが、単体ではAmazon.co.jpが入手しやすい。

富士ソフト「+F FS030W」

 +F FS030Wは、コンパクトタイプながら屋内用Wi-Fiルーター同様、5GHz帯は「W52」「W53」「W56」が全て使える。気象レーダー対策であるDFS機能も装備しているので、屋内では影響を受けないW52を使い、屋外ならW56を選ぶ、といった使い分けができる。

 コンパクトタイプのモバイルWi-Fiルーターの5GHz帯については、以前掲載した『Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(5)【モバイルWi-Fiルーターでの注意点】』を参照して欲しい。5GHz帯に対応しているので、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)では最大433Mbpsで通信ができる。ただし、2.4GHz帯と5GHz帯はどちらかに切り替えて使用するタイプで、同時使用はできない点は注意が必要だ。

 また、ACアダプターを接続すれば、バッテリーを抜いた状態でも動作するので、自宅内で電源入れっぱなしのまま使うのに便利だ。長時間充電しっぱなしにならず、バッテリーに優しい。オプションのクレードルを使えば、有線LAN接続も可能など、据え置きでの利用がしやすい作りだ。

 使い始めの際にはSIMを装着するのだが、SIMサイズは最近スマホで採用されているnanoSIMではなく、一回り大きめのmicroSIMなので注意したい。Rakuten UN-LIMIT回線のSIMは複数サイズの切れ込みがあるマルチタイプのカードとして提供されるので、nanoSIMではなくmicroSIMのサイズで切り離すといい。

Rakuten UN-LIMIT回線のSIMは、nanoSIMでもmicroSIMでも使える

 SIMの挿入は、スロットではなく金具のカバーで固定するタイプなので、アダプター部分がピンに引っかかるようなトラブルもない。nanoSIMをmicroSIMへサイズアップするアダプターを用い、1枚のカードをnanoSIMのスマホと併用する場合でも使いやすい。

SIMスロットは金具のカバーで固定するタイプ

 SIMをスロットに装着した後は、通常は前回も行った「APN」という接続先の設定が必要になるのだが、+F FS030Wにはすでに接続情報が入っているのか、APN自動設定機能によって電源を入れた直後に何もしないまま、Rakuten UN-LIMITの回線に接続できてしまった。

APNの設定はしなくても自動で繋がってしまった

 このまま初期SSIDと暗号化キーを変更すれば利用できるが、「かんたん設定」という機能があるので、念のためこれを使って、APNプロファイルとSSIDの設定を行っておいた。

 +F FS030Wはボタンプッシュで本体画面を切り替えられるが、その2画面目にSSIDと暗号化キー、さらに次の画面にSSID接続用のQRコードが表示される。これを+F設定ツールのアプリから読み込めば、Wi-Fiへの接続が行える。

現在のSSIDと暗号化キーは2画面目に表示される。「プライマリ……」と書かれているのがそれだ

 設定には、Android/iOS向けの「+F 設定ツール」アプリを使う。ただし、アプリの設定項目自体は単なるURLリンクなので、ウェブブラウザーで「192.168.100.1」にアクセスして設定しても同じだ。

表示されている初期SSIDに接続する
「+F設定ツール」アプリの画面。[設定]をタップ。ここからQRコードを読み込むことも
設定画面へのログイン。初期パスワード「admin」を入力。ウェブブラウザーで「192.168.100.1」にアクセスしてもいい
ホーム画面を見ると、事業者名に「Rakuten」と表示される。左上部の「←」をタップ

 ただし、+F FS030WのQRコードは、iOS(またはiPadOS)で読み取ると、構成プロファイルのインストールが求められるので、やや手順が煩雑になる。単純にスマホの設定画面から手動でWi-Fiに接続した方がラクだろう。

 今回は「かんたん設定」を使って設定できたが、APNは設定画面の[モバイルネットワーク設定]にある[プロファイル設定]からも設定できる。設定を変えたいときは、こちらからするといい。

[かんたん設定]をタップ。設定ウィザードが始まる
[プロファイル名]は任意の名前、[APN]に「rakuten.jp」と入力。[次へ]で進める

 Wi-Fi周波数は初期設定では2.4GHz帯となっているので、5GHz帯を積極的に使いたい。室内利用なら「W52」からはじめ、混んでいたら「W53」や「W56」を選ぶといい。2.4GHz帯と5GHz帯は、どちらか切り替えて使用するタイプだ。

[周波数]で5GHz帯のいずれかを選択。室内利用ならどれでもOKだ。任意のSSIDとセキュリティキー(暗号化キー)を入力して[次へ]
設定画面へのログインパスワードは必ず変更しておこう
設定内容を確認して[完了]をタップして保存。再起動される。設定したWi-Fiに接続する
Wi-Fi接続後、スピードテストアプリで回線速度を測定してみた。なかなか快調だ

 なお、オリジナルのSSIDと暗号化キーの設定については、以下の記事を参照して欲しい。

 ただ、この+F FS030Wでは、接続回線がRakuten UN-LIMITのバンド3なのか、auローミング回線のバンド18なのかが判別できない。どちらに接続しても回線は「Raktuen」と表示されるのみだ。次回は、このバンドの使い分けを見ていくことにしよう。

今回の教訓(ポイント)

コンパクトタイプのモバイルWi-Fiルーターで5GHz帯フル対応だと自宅回線で使いやすい
富士ソフト「+F FS030W」はRakuten UN-LIMIT回線でも使えるリーズナブルなWi-Fiルーター

「自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ! 使いこなし編」連載記事一覧

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。