急遽テレワーク導入!の顛末記

「コロナ第三波到来? 今すぐ用意しておきたい対策ツールを探してみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(28)

「リモートワーク・働き方改革展」に見る中小企業向けテレワークツール

「evort 3days Online Expo~リモートワーク・働き方改革展・健康経営・職場ヘルスケア展~」では、2つの展示会を実施

 テレワークの準備は、自宅から会社のサーバーにアクセスし、ビデオ会議に参加できる環境を整えること……だけでは終わらない。実際に運用してみると、細かいところで不自由が起きて、その対処に頭を悩ませることになる。それを解決するものの一つが、テレワーク向けのツールやガジェットだ。

 ……この記事を書いている時点で、全国で緊急事態宣言が解除されてから178日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を利用して、テレワーク用の機器を購入。現在はスタッフが可能な範囲で出社と在宅勤務を使い分けている。そこで起きているトラブルの解決策を探るべく、今回は11月18日~20日に開催された「evort 3days Online Expo」の会場をのぞいてみた。

【今回のハイライト】
オフィスに誰もいなくても電話対応OK
ビデオ会議の自動文字起こしが多言語に
そういえばスマホで名刺管理もDXだ

【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【4~8月末までの顛末はこちら】

11月18日(水):「リモートワーク・働き方改革展」に(オンラインで)行ってみた

 「evort 3days Online Expo」は、オンライン上で行われている展示会。「リモートワーク・働き方改革展」「健康経営・職場ヘルスケア展」が同時開催されており、各ブース(ページ)では商品紹介のPVや資料などが公開されていた。

 その中には、中小企業でも使えそうな展示があったので、いくつか紹介してみたい。

中小企業でも利用できる安価なクラウドPBX「OFFICEPHONE」

在宅勤務でオフィスにスタッフが不在な状況でも、会社宛の電話に出られる

 法人向けのインフラやセキュリティを手掛ける 株式会社ベルテクノスでは、クラウドPBX「OFFICEPHONE」についての展示を行っていた。

 PBXとは電話交換機のことで、外部からの着信を内線に転送する時などに利用されているもの。クラウド型は機器の設置を必要としないため、初期費用が安く済むなどのメリットがある。

 「OFFICEPHONE」では手持ちのスマホに専用アプリをインストールすることで、会社の電話番号宛の着信を取ることができる。もちろん、内線の着信対応や転送も可能。着信時に相手情報を表示するCTI機能も用意されている。これなら、新型コロナウイルスの影響でスタッフ全員が在宅勤務になっても、会社宛に掛かってきた電話に対応できそうだ。

 初期費用はキャンペーン適用で無料となっており、基本料金は10ライセンスまで利用可能なライトプランの場合で月額が3400円、これに1ライセンスあたり190円のライセンス料がかかる。内線電話は通話料がタダなので、社内用のボイスチャットアプリとしても利用できそうだ。

ビデオ会議の自動文字起こしに翻訳機能をプラスした「ObotAI Minutes」

 以前に足を運んだ「総務・人事・経理Week」では、音声認識による自動文字起こしサービスが多数展示されていた。これは、ビデオ会議向けのソリューションとして、議事録を起こすような用途を想定したもの。会場では音声がリアルタイムでテキスト化される様子が見られた。

ビデオ会議の音声をリアルタイムで文字起こしして、議事録として保存できる

 これを一歩進めたのが、多言語AIチャットボットの開発を手掛ける株式会社ObotAIの「ObotAI Minutes」。ビデオ会議の音声をリアルタイムで文字起こしするとともに、それを100種類以上の言語に翻訳してくれる。

 「ObotAI Minutes」では会議の内容を多言語翻訳された状態で議事録化できるので、他のスタッフと気軽に会議の内容を共有できるのがうれしいところ。基本料金は1ユーザーあたり月額1500円から。中小企業でも導入を検討できる価格帯だ。

 多言語対応については、うちの会社でも東京オリンピックに向けて準備をしていた。来年開催されるかは不透明な状況だが、正式に決定すれば利用を検討するシーンも出てくるだろう。

ビデオ会議でも名刺交換!? DXの第一歩に「Eight」を

名刺を撮影することで、デジタルデータとして管理できる

 「DXの第一歩はここから」のキャッチコピーで出展していたのが、名刺管理サービスの「Eight」。随分前から個人的に利用していたので、そういう感覚はなかったが、言われてみればこれもDXの一つだ。

 「Eight」はスマホで名刺を撮影すると、それをOCR技術でデータ化して、電話帳のような感覚で管理できるアプリ。いちいち電話番号や住所などを手入力しなくても、名刺に書かれた情報が自動で登録され、ワンタップで電話をかけたり、地図が表示できる。

 今回出展されていた「Eight 企業向けプレミアム」では、スキャンした名刺データを、同じ会社のメンバーと共有することが可能になる。取引先に電話をしようとして、担当営業に連絡先を聞く……というのは良くある話。ただ、同じオフィスにいないテレワーク状態だと問い合わせるのが手間だし、時間がかかってしまうので、もっと簡単に検索できるのはありがたい。

スキャンした名刺データベースを元に、社内コラボレーションや商談管理を強化

 この「Eight」を提供しているSansan株式会社の法人向け名刺管理サービス「Sansan」になると、オプションで商談の管理も可能になる。うちの会社では取引先の管理を、売り上げ管理ツールの「board」で行っているが、そこでネックになっているのが取引先情報の入力作業。忙しい時にはつい後回しにしがちだが、名刺スキャンだけで情報が入力できるのは、かなり楽そうだ。

 そして、「Sansan」でもう一つ面白いのがオンライン名刺交換の機能。最近ではビデオ会議の機会が増えているため、名刺を交換したことのない取引先が増えた。こうなると、取引先の情報を名刺で管理しづらくなるが、その解決策の一つになるかもしれない。相手が「Sansan」を利用していなくても、スマホで撮影した名刺データを送ってもらい、データベースに登録できる。

 基本料金は「Eight 企業向けプレミアム」が月額1万円で、ここにユーザーごとのアカウント料が400円かかる。とはいえ、通常の「Eight」は無料で使えるので、まずは同僚の間で利用を広めてから、利便性を会社にアピールするのが良いかもしれない。

「リモートワーク・働き方改革展」には、他にも様々な企業が出展していた

 会場では他にもオンライン商談や個人情報管理、ワークフローシステムなどについての展示が行われていた。テレワーク需要に合わせて、関連ツールの数も増えており、価格もある程度こなれてきたように思う。以前に導入を見送った会社でも、情報をリサーチするには良いタイミングではないだろうか。

 最近ではビジネスの現場で“属人化”が問題視されているが、テレワークでスタッフ同士の距離感が離れると、それが加速する恐れがある。今回紹介したようなツールを用いて、社内のコミュニケーション環境を整え、議事録や交換した名刺を公開することは、その改善にもつながるかもしれない。

「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧

※編集部より
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飛田九十九