自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第38回

Amazon「Fire TV Stick」をつなぐWi-Fiルーターを設定しよう

 使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行から自宅で過ごす時間が増え、僚誌AV Watchの7月14日付記事『有料の動画配信サービス利用率はAmazonが突出。外出自粛で動画視聴大幅増』にもある通り、ネットで自由に映画や番組を楽しめるVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスが人気を集めている。

 そこで、在宅時間の増加から人気のAmazon「Fire TV Stick」を解説している。パッケージには取説が入っていないので、知らないとちょっとハマる部分もある。セッティングから使い方のポイントまで、丁寧に一通り紹介していくので、これから使い始める人はぜひ参考にしていただきたい。

Amazon「Fire TV Stick」をWi-Fiに接続する際に起きやすいトラブルシュートを行っている

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 使っているのは、4K動画にも対応した上位モデルの「Fire TV Stick 4K」だが、基本的な使用方法は同じだ。前回はFire TV StickをテレビのHDMI端子に接続し、セットアップを始めたところまで進めた。

 さて、自宅Wi-Fiで5GHz帯を使っているSSIDが、Fire TV Stickからは見つからないことがある。これは、4Kではない無印のFire TV Stickのみで起こる症状だ。Fire TV Stick は5GHz帯のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)に対応しているのだが、この症状は、実際に使用できるチャンネルが制限されているためだ。

 5GHz帯には「W52(5150~5250MHz、36~48ch)」「W53(5250~5350MHz、52~64ch)」「W56(5470~5725MHz、100~140ch))」の3グループがある。この5GHz帯の規格についての詳細は、本連載の第7回『Wi-Fiルーターのチャンネル設定をチェック(チャンネル設定編)』を参照して欲しい。

5GHz帯のチャンネル使用状況を可視化したもの

 Fire TV Stickは、画面の左側にあたる「W52」の36/40/44/48チャンネルにしか対応していない。このため、Wi-FiルーターでW52以外の「W53」または「W56」を使用していると、Fire TV Stick側からSSIDを見つけられないというワケだ。

Fire TV StickでWi-Fiの接続先を選択する画面。無印Fire TV Stickでは、ここで5GHz帯のSSIDが見つからないことがある

 5GHz帯で使われるチャンネルは、Wi-Fiルーターが初期設定のままだと「自動」や「オート」になっていて必ずしもW52が選ばれるとは限らないのだが、これを設定でW52に固定してやれば解決する。

 こうした設定をせずに運良くSSIDが見えていても、チャンネルが勝手に切り替わったりして後々トラブルとなるので、無印のFire TV Stickを設定する際には、5GHz帯をW52に固定するようWi-Fiルーター側で設定しておいて欲しい。

 設定方法はWi-Fiルーターによって異なるが、「36」チャンネルまたは「W52」を固定するように指定すればいい。

 なお、5GHz帯で80MHz幅へと設定を行なうと、W52にある4つ分のチャンネルがちょうど埋まることになる。Fire TV Stickは、無印、4Kともに11acが2x2 MIMOに対応しているので、867Mbpsの速度で接続できる。

 この状態できちんと繋がれば、フルHDはもとより、4Kでの動画視聴も問題ないはずだ。なお、5GHz帯ではなく2.4GHz帯で使用すると11nの40MHz幅でしか利用ができず、転送速度が頭打ちとなってしまうので注意したい。

バッファローのWi-Fiルーター「WXR-1750DHP2」の設定画面。[無線設定]の[5GHz]で[無線チャンネル]で「36チャンネル」を選択
[倍速モード]が「1300Mbps(80 MHz)」であることを確認。「HT80」と記されたルーターもある。「設定」ボタンで変更を反映後は、「36チャンネル」の横が「(現在のチャンネル:手動選択)」となる
設定後に5GHz帯のWi-Fiをスキャンすると、5GHz帯が36チャンネルの80MHz幅に設定されていることが確認できる
富士ソフトのモバイルWi-Fiルーター「+F FS030W」では、[LAN設定]にある[プライマリ無線LAN設定]の周波数で「5GHz(W52)」を、周波数帯域幅は「HT80」を選択

 このように、Wi-Fiルーター側でW52に周波数を固定して使うようにすれば、無印のFire TV Stickでも5GHz帯を使うSSIDに問題なく接続できるはずだ。

 ただし、5GHz帯のW52は最も混み合うチャンネルでもある。無印のFire TV Stickを高速なWi-Fiにつないで使うには仕方ないが、できればW52以外のチャンネルを積極的に使いこなしたいところ。

 連載の第36回でFire TV Stick 4Kをお勧めしたのは、こうした理由からだ。

Fire TV StickでWi-Fiを検索する。こちらはFire TV Stick 4Kの画面。無印でない4KはW53とW56に設定したSSIDも検索できている。できればこちらがオススメだ

 Fire TV Stick 4Kは多少高価だが、テレビがフルHDまでであったとしても、Wi-Fiを快適に使うには大きな意義があるチョイスだ。W53やW56の周波数帯域を用いたときに、気象レーダーや航空レーダーと競合した際、チャンネルを動的に変更する「DFS(Dynamic Frequency Selection)」という機能がある。ただ、これらのレーダーを検知する地域はある程度決まっている。そうした場所を除けば、電波が空いていて安定した通信ができる。

 Wi-Fiでの接続がどうしても安定せず、テレビの設置場所で有線LANが使えるのなら、Fire TV Stickに有線LANアダプターを取り付けて利用する解決方法もある。これについては次回以降、4Kコンテンツの再生を行うときにあらためて触れることにしよう。

今回の教訓(ポイント)

4KではないFire TV Stickは、5GHz帯のWi-Fiで利用できないチャンネルがある
Wi-Fiルーターで5GHz帯のW52にチャンネルを固定して利用する

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。