自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ!

【使いこなし編】第47回

Amazon「Fire TV Stick」を低速モバイル回線で活用してみる

 使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行から自宅で過ごす時間が増え、僚誌AV Watchの7月14日付記事『有料の動画配信サービス利用率はAmazonが突出。外出自粛で動画視聴大幅増』にもある通り、ネットで自由に映画や番組を楽しめるVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスが人気を集めている。

 そこで、在宅時間の増加から人気のAmazon「Fire TV Stick」を解説している。パッケージには取説が入っていないので、知らないとちょっとハマる部分もある。前半の解説で、Fire TV Stickを5GHz帯の自宅Wi-Fiに接続できている。これからセットアップする人は、そちらから読みはじめてもらいたい。

今回は、1Mbpsの通信制限を受けた状態のモバイル回線でFire TV Stickを使ってみよう。設定は前回と同じでOKだ

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 前回は、Fire TV Stickを固定回線の光回線ではなく、モバイル回線に接続して活用している人向けの設定を行ってみた。

 これは、画質をそこそこにしてデータ通信容量を抑える設定だったが、今回はこれをさらに進めて、容量制限がかかってしまった状態でどうなるかを検証してみたい。

容量制限がかかった状態で試してみる

 今回使っている楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」は、楽天回線ではほぼ通信容量を使い放題だが、パートナーエリアとなるau回線は月間5GBまでで、これを超過すると1Mbpsの速度まで落ちる。

 ただし、「my楽天モバイル」の設定であらかじめ低速モードへ切り替えておけば、楽天回線エリア外のパートナーエリアでも、1Mbpsに制限されたままの状態ながら、ずっと通信をし続けられる。

 データ超過時の速度制限が1Mbpsのプランは、ほかにY!mobileやUQ mobileでも用意されているし、UQ WiMAXも直近3日間で10GB以上使った場合の制限は1Mbpsだ。また、NTTドコモの30GBまで使える「ギガホ」というプランでも、容量超過時の制限速度は1Mbpsとなっている。

「Rakuten UN-LIMIT」の回線では、「my楽天モバイル」のアプリやウェブページで「データ高速モード」をオフにしておくと、パートナー回線接続時に通信速度が1Mbpsに制限される代わりに通信容量が減らない。最近は、こうしたモードが他社回線でもよく見られる

 この1Mbpsという速度は、実際のところ動画視聴にも意外と使えてしまう(もちろん画質は妥協する前提で)。これまで多かった128kbpsの帯域制限は、スマホで何をするにも止まったようになってしまい、動画の視聴などはどうにもならなかったが、1Mbps制限であれば、ワリと使える感触の人が多いのではないかと思う。

 今回は、この1Mbpsの制限下で、Fire TV Stickの動画を視聴したときの快適度を見てみよう。設定の前回紹介したものを適用していることが前提で、その詳細は前回を参照して欲しいが、具体的には以下の内容だ。

  1. [設定]―[ディスプレイとサウンド]―[ディスプレイ]で[720p 60Hz]を選択
  2. [設定]―[ディスプレイとサウンド]―[色深度]で[8ビット]を選択
  3. [設定]―[環境設定]で[データ使用量の監視]を[オン]にする
  4. [ビデオ画質を設定]で[標準画質]を選択
まずは、チェックも兼ねて現在の回線速度を測定。ちょうど1Mbps弱というところ
[設定]―[ネットワーク]から接続中のSSIDを選んで回線状態チェック。特に問題はなく通信状態は良好
ホーム画面の読み込みでレスポンスが落ちるときもあるが、ほぼ支障なく使える

画質を妥協して、Amazon提供コンテンツをメインに再生すればワリと見られる

 Amazonプライムビデオのコンテンツ再生時には、開始されるまでにバッファを読み込む時間が長めになる。また、ステータスバーで「HD」表示が点灯しないので、SD画質での再生になっていることが分かる。

再生ボタンを押してから再生が始まるまで、データのバッファに時間がかかり、かなり待たされる
プライムビデオ再生時のステータスバーでは「HD」表示が点かず、SD画質での再生となる

 再生時の画質はやや落ち、動きのあるシーンではブロックノイズが目立つが、鑑賞に堪えないというレベルではない。無料ライブ配信中の「TBS NEWS」も再生は可能だったが、けっこうブロックノイズが入り、テロップは読みにくくなった。

無料ライブ配信中の「TBS NEWS」のテロップ部分拡大。ブロックノイズで多少読みにくいときがある

 ABEMAでは、ライブNEWSチャンネルを含め問題なく再生されるが、画質はけっこう低下する印象。ブロックノイズが多めで、小さなテロップなどは読めなくなることもある。ただ、チャンネル選択画面の表示も含め、実際の使用には問題なさそうだ。

ABEMAは実用的だが画質が低くなる。表示はライブNEWSチャンネル

 TVerも特に問題なく利用できた。再生時も多少ブロックノイズも出るが、コンテンツが地上波テレビ向けで、テロップなどがもともと大きめで見やすいこともあり、見にくいシーンはなかった。

TVerも多少画質が落ちるが、特に問題なく視聴できた

 Huluも試してみたが、トップ画面が表示されるまでにかなり時間がかかり、タイトル再生後も頻繁に再読み込みがかかったりして、こちらはあまり実用的ではなかった。「基本設定」の「アドバンストモード」という項目に通信量を下げる設定はあるのだが、再生品質をコントロールする方法がないためかキツイ感じ。このように、アプリによっては使用に堪えないケースもある。また、ネットの混み具合も影響する。

Huluでの再生は残念ながら実用的ではなかった。アプリのホーム画面でのサムネール表示も遅い
ちなみに128kbps制限のモバイル回線では、動画視聴はできなかった

 このように、Amazon提供のコンテンツをメインに再生することと、画質がある程度落ちることを許容すれば、意外と使える印象だ。モバイル回線で長時間制限なく動画を楽しみたいときには、選択肢として考えてもいいだろう。

 ただ、ちょっとしたWi-Fiの影響で再生バッファ待ちになり止まりやすいので、モバイルWi-FiルーターとFire TV Stickを極力近づけておきたい。また、表示させるディスプレイには小さめのサイズを選ぶと画面の荒さがだいぶ気にならなくなる。

 スマホのテザリングもある程度は活用できるだろうが、モバイルWi-Fiルーターとは違ってACアダプターに接続しっぱなしで長時間連続的にデータ転送をするような使い方は想定されていない。異常発熱やバッテリー不良を起こす可能性があるので、十分に注意しながら使って欲しい。長時間連続使用したいなら、モバイルWi-Fiルーターを用意することを検討した方がいいだろう。

今回の教訓(ポイント)

モバイルWi-Fiルーターの1Mbps制限回線でもFire TV Stickで動画視聴が可能
再生の読み込みは遅く、アプリによっては快適に利用できない場合も

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。