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【使いこなし編】第112回

バッファロー版「nasne」をWindowsで使ってみる ~PC TV Plusでアップロードムーブ編~

 本連載では【使いこなし編】の第48回から第53回まで、Amazonの「Fire TV Stick」と、アイ・オー・データ機器の「REC-ON」シリーズを組み合わせて、録画したテレビ番組をWi-Fi経由で視聴する環境を紹介した。

 これと似ているが、バッファロー版の「nasne(ナスネ)」と、「PS5」やAmazon「Fire TV Stick」、またはスマホや「Chromecast with Google TV」の「torne mobile」を組み合わせて、自宅内のWi-Fiだけでなく、外出先のモバイル回線やホテルで提供されているWi-Fiにつなぎテレビで視聴する方法や便利な使い方などを紹介している。

 Windows PCでPC TV Plusを使い、nasneと組み合わせた活用をしている。nasneで録画した番組をPCへダウンロードしたり、BD-Rへ書き込んでみたりして、録画番組をバックアップしている。

Windows PCの「PC TV Plus」で「nasne」からダウンロードした録画番組を、ほかの機器へアップロードムーブしてみる

 今回はPC TV Plusを使ってnasneからPCへダウンロード保存した録画番組を、BDレコーダーやNAS[*1]などのネットワーク対応機器に対し、ムーブでアップロードをしてみよう。PC TV Plusを介せば、nasne→PC(PC TV Plus)→レコーダーまたはNAS、という移動が可能になる。

[*1]……NAS(Network Attached Storage)は、LANに接続して使うハードディスクのような製品だ。データはLAN経由で転送する。ローカルディスクと違い、複数のデバイスから同時に接続して使えるのがメリット。ちなみにnasneは、NAS+テレビチューナーという位置付けとなる

 当然だが、3つの機器は全て同一LAN内にある必要がある。全ての操作はPC TV Plus側から行い、PC TV Plusへダウンロードして保存されている録画番組を“アップロードムーブ送信”という操作をするという手順になる。そして、この作業では、移動先のレコーダーやNASがアップロードムーブ受信に対応している必要があるので、事前に仕様をチェックしておこう。

連載でこれまで紹介した操作を簡単に図解してみた。今回は「(3)アップロードムーブ送信」。操作は全てPC TV Plusで行っている

 また、DTCP-IPに対応しないNASは利用できない。DTCP-IP対応のNASは、RECBOXやLinkStationなど、「DTCP-IP対応レコーディングハードディスク(ネットワークディスク)」とうたわれている製品を活用するといい。

 今回は、Fire TV Stickとの組み合わせを以前に紹介したアイ・オー・データ機器「REC-ON(HVTR-BCTX3)」シリーズを使ってみる。

 この製品の仕様にはアップロードムーブ受信に対応するとは記載されていないが、実際に実行してみたところ可能だった[*2]

 アップロードムーブ受信については、操作する側かどうかと、送受信のどちらかでそれぞれ対応が異なっていたりして、なかなか複雑なので、とにかく実際に実行してみることをオススメする。

nasneと「REC-ON(HVTR-BCTX3)」シリーズ

 ただ、大切な番組の転送は、安定してムーブができることを確認してから実行して欲しい。nasneからPCへPC TV Plusでダウンロードした番組はコピーワンスになるので、その後PC TV Plusからレコーダーなどへの転送に失敗すると消えてなくなってしまう。

 このため、最初にムーブを実行するときは、消えてしまっても構わないものでテストしてみて欲しい。短ければ転送に時間がかからないので、テスト用に新しく番組録画してもいいだろう。

[*2]……REC-ONではアップロードムーブをREC-ON側の操作で実行するのが基本で、アップロードムーブ受信機能は公式にうたわれている機能ではないため、将来のファームウェア更新などでできなくなる可能性もある。編集部でも動作を保証はできないし、アイ・オー・データ機器への問い合わせなどもしないで欲しい。なお、RECBOXとLinkStationに関しては、PC TV Plusのヘルプで推奨環境に挙げられている

 注意点としては、LAN内での機器認識に少し時間がかかるほか、起動直後はアップロード可能な機器として認識されないことも多いことがある。PC TV Plusを起動し、しばらく後に実行すれば認識されるはずだ。PC TV PlusでREC-ONの番組を再生して確認したりするといい。

 また、PC TV Plusでは、利用するネットワークアダプタ(LANポート)を指定できるので、認識に時間がかかるようなら設定してみてもいいだろう。以下を参考に、転送先の機器(ここではREC-ON)のIPアドレスを固定しておくことでも、認識の速度が上がり、安定する場合がある。

PC TV Plusの起動直後はアップロード可能機器として認識されないケースがあった。この場合はアップロード操作を受け付けてくれない
有線LANとWi-Fiなど、2種類以上のネットワークアダプタがある環境では、PC TV Plusの[アプリの設定]の[全般]で、標準で使用する方を指定すると安定動作する場合がある

 ムーブする番組は、nasneの録画設定で[録画モード]を[DR(放送画質)]にしておくのが基本だ。同じ圧縮の録画モードがあれば問題ないが、圧縮してしまうと転送先で再生できるとは限らないからだ。ちなみにREC-ONでは、nasneの[3倍(AVC)]圧縮の録画は転送を受け付けない。もし、圧縮が必要なら、転送してから圧縮をするといい。

 まずは、DR画質で録画した番組をnasneからPC TV Plusへダウンロードしておく。この手順は以下ですでに紹介しているので参考にして欲しい。

 次に、PC TV Plusの[Video]タブで[PC]に保存したファイルのみを表示させる。メニューでチェックを入れてもいいし、機器名をクリックしても表示が順次切り替わっていく。アップロードする録画番組が[DR]であることを確認しておこう。

[Video]タブで表示を[PC]に切り替える。[モード]で[DR]であることを確認

 アップロード可能機器として認識さえできれば、操作自体は、ダウンロードと同じで簡単だ。操作時に転送先のレコーダーで録画が始まらない時間帯に実行するようにする。

リストで番組を右クリックするか、[…]からメニューを表示させ[アップロードする]を選択。複数番組を転送することもできる
[アップロード先]で転送先機器のディスクを選択し、[開始]をクリック
確認画面が表示される
アップロードムーブの進行中……
転送先の機器では、転送中に[LANダビング]などと表示される
無事にムーブ完了
アップロードしたPC TV Plus側から番組がなくなっている
アップロード先で確認すると番組が転送されていることが分かる

 このアップロードムーブ機能を使うと、BDレコーダーやNASだけでなく、PC TV Plusをインストールした別のPCにもアップロードができ、これらはバックアップにもなる。

 PC TV Plusを使うPCを変更したいときは、一時的にNASなどを仲介させて移動するほか、体験版として使える14日間のうちに、アップロードムーブを実行して番組を移動してから、購入したPC TV Plusのアカウントを新しいPCへ移行させてもいいだろう。なお、nasneでは残念ながらアップロード受信を受け付けてくれない。

 REC-ONで番組を再生したいだけなら、nasneに録画した番組をネットワーク経由で再生することも可能だし、これまでも見てきたように、Fire TV StickやChromecast with Google TVなどを使えば、どこからでも視聴できるので、わざわざムーブさせる必要はない。

 録画した番組を、あくまでもバックアップとして移動させたいときに便利な機能と言える。ちょっと煩雑だが、日本国内でテレビ放送を録画した番組を長く保存するには、現状では必須のテクニックだ。うまく使いこなしてみて欲しい。

今回の教訓(ポイント)

PC TV PlusからBDレコーダーなどにアップロードムーブ送信で転送ができる
DTCP-IPとアップロードムーブ受信に対応する機器であれば可能

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。